「……わかった。そのかわり私もついていく。いいよね?」

「ああ、わかってる」

 もたもたしている時間はない。
 私たちはすぐに部屋を出ようとした。しかし、その前にひとつだけ。

「誠くん、これ」

 私は壁にかけてあったラケットケースを誠くんに手渡した。

「どうせあの場所に行くならこれも持って行こうよ。みなみちゃんを助けて、そのあと誠くんは優勝する。私たちは絶対運命になんて負けないから、だから、これ」

「冬木……。ああ、そうだな、そうしよう」

 ラケットを担いで、今度こそ私と誠くんは家を飛び出した。

「とばすからちゃんと捕まってろ」
「……うん!」

 自転車の後ろに腰かけて、誠くんの背中にしがみつくと猛スピードで自転車が走り出した。

 運命の時間まであと少し。
 大丈夫、きっと運命は変えられる。変えてみせる。