「みなみか、どうしたんだ?」

『今日大会でしょ? 私この前応援行けないって言ってたけど、急に予定が開いちゃってさ、暇だから会場まで行こうと思ってるの』

「な――」

 一瞬、私も誠くんも息が止まった。

 会場まで向かうということはつまり、あの場所を通るということ――。

「みなみ! お前今どこからかけてきてる!?」
『え? 駅の公衆電話だけど、どうしたのそんな大声出して』

 嫌な音とともに心臓が飛び跳ねた。

 事故の時間まであと三十分。そして駅から会場までの距離もちょうど三十分前後。
 まずい、絶対にまずい。

「待て! 会場には行くな! 俺も今日は行かないことにした! 頼む、絶対に会場には向かわないでくれ」

『行かないことにしたって、誠らしくないよ。あんなに張り切ってたじゃん。あ、もしかして私が応援に来るの嫌がってる?』

「違う! 話を――」

『あ、ごめん誠、十円しか入れてないからもう時間ないや。差し入れとか色々買ったから頑張って優勝してね。 それじゃ!』

 そこで通話は途切れた。途切れてしまった。