普段飄々としている白猫の動揺は私たちにとって決していいものではないのだと直感的に理解する。おかしいとはどういうことなのか、それを聞くのがたまらなく恐ろしかった。

「千歳ちゃんは知っていると思うけど、ボクは人の心や過去の記憶が読めるんだ。だから君たちがどれだけ強い意志を持っているかボクにはわかる。君たちの決意は並大抵ではない、なのに、なのに――」

 白猫はひと呼吸置いた。そして、

「――なのに、運命は変わっていない」

 信じたくないもないことを告げて、白猫は黙り込んでしまった。

 その場にいる誰もが口を閉ざした。何も言葉が出てこなかったのだ。

 私は誠くんを救うためならなんだってする覚悟がある。誠くんもお母さんとの約束を果たすためにこんなところで命を投げ捨てるようなことはしないはず。心を読めない私でさえ私たちの決意が固いことはわかる。

 一体、何が運命を不確定にさせているのだろう。

 再び沈黙が訪れるも、その直後、誠くんの携帯が場違いに賑やかな音を奏で始めた。

「……公衆電話からの着信?」

 画面を見た誠くんが訝しげに呟き、おそるおそる応答ボタンを押す。

『もしもーし、誠? 私だけど』

 スピーカー越しに聞こえてきた声はみなみちゃんのものだった。