……限界だ。

 誠くんを助けられないという焦り、彼の邪魔をする罪悪感。とてもひとりでは処理しきれない膨大な負の感情が私の心をかき乱す。

 そして追い打ちをかけるように、私はとんでもないことを知ってしまった。

「――母さんと約束したんだ」

 そのひと言は私の罪悪感をよりいっそうに掻き立てた。

 もう会あうことのできない母親と交わしたたったひとつの約束。
 それを他でもないこの私が踏みにじろうとしているのだから。たとえ誠くんを救うためでも、私にはとてもその約束の重さを背負う力はなかった。

「……私、最低だ」

 だからあの祭りの日、私は誠くんから逃げだした。
 彼に合わせる顔なんてどこにもない。

 不安や罪悪感、恐怖、後悔。

 ありとあらゆる感情がごちゃ混ぜになって息ができない。自分がどこに向かっているのか、何をしたいのか、どうすべきなのか、見えていたはずの道が何も見えなくなってしまった。

 気が付けば私はあの場所に足を運んでいた。
 真夜中の学校は暗くて何度も転んで、痛くて苦しくて怖くて涙が止まらなかった。