その甲斐もあって今の誠くんは以前の誠くんよりもテニスの技術は未熟だったし、頭痛の回数も目に見えて増えていった。

 よかった、確実に上手くいっている。
 熱心にテニスに打ち込んでいる彼の邪魔をするのは心が痛む。
 だけど全ては誠くんのため。

 あともう一歩だ。もう少しのところまできているに違いない。

「どう? 誠くんの運命は変わった?」
「まだだね」

 しかし、たまに現れる白猫に訊ねてみても運命は変わっていないようだった。

 それでもまだ私は前向きだった。
 大丈夫、あと五か月もある。やれることはたくさんあるはずだ。

「――どう?」
「まだだね」

 ひと月が経ったその日も返答は変わらなかった。
 でも大丈夫、まだ四か月ある。頑張るのはこれからだ。

 それからも私は足掻き続けた。
 足掻いて足掻いて、思いつく限りのことをやってきた。

 ――けれど。

「……どう?」
「まだだね」

 白猫の返答は、一切変わらなかった。