気に入った。
 階段の最上段に腰かけるとズボン越しに硬くひんやりとした感触が伝わってきた。暑がりの俺にとってはそれすらも高評価だ。

 早速弁当を広げ、スマホを片手に箸を進める。昨日撮った壁打ちの動画を確認しながら問題点を洗い出し、咀嚼とともに改善策を考える。この作業は面倒だがとても大事なことだ。

 そうしてひとりの時間を過ごしていると、ふと階段を上がってくる音が聞こえた。妙に足取りが軽やかで、足音だけでその人物がご機嫌なのだとわかる程。

 段々近くなってくる足音は、やがて俺の目の前でぴたりと止まった。

 ……何か嫌な予感がするな。

 スマホを下げ、おそるおそる視線を向けると――そこには、奴がいた。

「げ」

 思わずそんな声を漏らしてしまった。