白猫は考えをまとめるように「うーん」と唸った。白猫の言葉を待っている間暇だったので背中を撫でてみると猫扱いするなと怒られた。

「彼が記憶を取り戻すこと自体は問題じゃないよ。そうなれば彼は自分の結末を理解し、自発的に事故を回避しようとするだろうね。運命が彼を事故現場に向かわせようとしても、さすがに本人と君が強い意志を持って回避行動をとれば運命は変わる」

「じゃあ誠くんに私のことを思い出してもらうのが一番いいってこと？」

「それが難しいところでさ、彼が自発的に思い出すのはいいんだけど、さっきみたいに君が未来のことをちらつかせて思い出させるのはアウトなんだ。それは昨日説明したルールに引っかかってしまう」

「未来から来たことを話してはいけないってやつ？」

「そう。だから彼の記憶を戻したいのならもっとやり方を考えなきゃね。たとえば未来のことは話さないけど、以前彼と話した会話を再現するとか、彼と行った場所にまた一緒に行くとかね」

　聞きながらうんうんと頷いた。
　白猫の言い分は至極もっとなことだった。要は未来のことを話さず、かつ未来と同じ行動をとればいいらしい。