このまま話していたらボロを出すかもしれない。うっかり未来から来たことを漏らせばその瞬間私は未来に戻される。

「ごちそうさま」

 しかし都合がいいことに、誠くんは私から逃げるために早々とお弁当を食べて教室に戻ろうとした。引き止めるように何度か会話を交わすけれど、私は彼が止まらないことを知っているから安心して見送ることができる。

 そうして彼の姿が見えなくなった瞬間、全身から力が抜けた。

「危なかったあ……」

 深呼吸をして心臓を落ち着かせようと試みる。
 その瞬間、どこからともなく白猫の声が聞こえてきた。

「いやほんと、気をつけてよね」
「ひっ」

 落ち着きかけていた心臓がまたも飛び跳ね、いつの間にか白猫が私の膝に乗っていることに気付く。

「聞いてたの……?」
「聞いてたよ。さっきのはグレーゾーンだね。あれで彼が君のことを思い出していたらアウトだったよ」

「え、私のことを思い出したりするの?」
「そりゃあするよ。未来の記憶を消していても彼の魂自体は君と同じく未来から来ているからね。何かがきっかけで君のことを思い出すかもしれない」

 そうなんだ、と息を飲む。

「もし何かがきっかけで誠くんが私のことを思い出したら全部終わり……?」
「んーそれが、そうでもなかったりするんだ。ちょっとややこしいけどね」
「どういうこと?」