「げ」

 予想通り、嫌そうな視線を私に向けてくる。

「わあ! あからさまに嫌そうな反応!」

 始めからわかっていたから、臆することなく笑顔で言えた。

 どこかへ行ってほしいと言いたげな態度をとる誠くんを軽く流して無理矢理座る。彼が押しに弱いことを私は知っている。だからこその行動。

「いい場所だよねーここ。前から気に入ってたんだー」

 とりあえず適当な話題を振っておこう。どうせ何を話しても彼は興味を持たないから天気とか気温とか、そんな話でもいいかもしれない。

 しかし彼からの反応は意外にも鋭かった。

「まだ入学して二日目だろ。留年でもしたのか」

 しまった、と心の中で顔をひきつらせた。

 そうだった。私たちは入学して二日目、本来ならこんな場所を知っているわけがない。今の言葉は明らかに不自然、失言もいいところだ。

 焦って一瞬思考が停止する。まずい、何とか誤魔化さなくては。

「ぶは! 留年って! 誠くん面白いね!」

 考えた末、私は笑って誤魔化すことにした。

「馬鹿にしてるのか」

 そんな反応が返ってきたことに心から安堵する。

 危なかった、今の言葉を白猫に聞かれていたらまずかったかもしれない。
 笑顔をキープしているものの、内心では心臓が破裂しそうな程音を立てていた。