「なるほどね。まあ事故って難しいよねえ。突発的に発生するものだから対策するには「そもそもその場所に行かせない」くらいしか選択肢がないんだもの」
「だよね。あと、重たいからそろそろ降りてくれないかな……」
「あ、ごめん」

 白猫はてへっとわざとらしく言ってから床に降りてくれた。

「それじゃボクはそろそろ行くかな。時々君たちの様子を見に来るよ。彼の運命が変わったかどうかもその都度教えてあげる。あと一応言っておくけど、ボクは君に口出しはできるけど手出しはできない決まりになっているから、あんまりボクのことはあてにしないでね。」

「うん、わかった。ありがとう」
「それじゃまたねー」

 白猫は手を振るかわりに尻尾を振ってくれた。そのまま眺めていると、白猫の体がすうっと段々と半透明になっていき、やがて完全に見えなくなった。

 その光景をひととおり見終えた後、大きく息をついた。
 喋る猫に、時間跳躍。

 にわかに信じがたい出来事の数々に今でも理解が追い付かない面がある。
 全て夢なのではと、どうしても疑ってしまう。

 でも、私は確かに戻ってきた。
 頬をつねれば痛いし、誠くんから貰ったネックレスも確かに持っている。

 そしてなにより、誠くんが生きている。

 間違いなくここは現実だ。
 
「待っていて誠くん、必ず助けてみせるから」

 決意を胸に、私は眠りについた。