「そっか。じゃあ、準備はいいかい?」

 白猫の言葉を受けて是非もないことと私は無言で頷いた。が、その直後ひとつだけ思いついたことを訊ねてみる。

「これ……持っていけないかな」

 胸元のネックレスを指で揺らし、白猫に訴えかける。

 過去に戻れば、その誠くんは私のことを知らない。ただの初対面。そうなれば私と彼の間には何の思い出も残らないことになる。

 私のことを知らない誠くんを想像するだけで張り裂けそうなほど胸が苦しくなる。だからせめて、これだけでも持っていきたい。そうすればきっと私は戦える。彼を救うのだと奮起できる。

「うーん、あんまり良くないことなんだけど……まあいっか。うん、いいよ、そのネックレスも一緒に送ってあげる」

 特別だからね、と強く念を押された。

「ありがとう」

 お礼を言うと白猫はやや満足そうに胸を張った。

「素直な子は好きだよ。それじゃあ改めて、準備はいいかな?」
「……うん!」

 今度こそ何も思い残すことはない。
 覚悟はとっくにできている。

 待っていてほしい。絶対に助けてみせるから。
 ――たとえ、どんなことをしたとしても。