「もっと言うなら、君は彼を知っているのに、彼の方は君を知らないからね。また一から関係を築く必要がある。きっとその差でも苦しむと思うよ」

 それでもやる? と白猫はじっと私を見つめてきた。

「やる」

 それでも、私は迷いなく応じた。
 白猫の忠告が善意からくるものだというのは聞きながら実際に納得できた。

 出会ってたった半年の関係。恋人どころか友人ですらない。そんな相手にそこまでする必要があるのだろうかと、白猫はそう思っているはずだ。

 しかし他の人にとってはたったの半年だとしても、その半年が私にとっては永遠にも等しい救いだったこともまた事実。
 
 人と人との繋がりは何も時間だけが全てじゃない。何年も付き合いがあるのにお互いのことを何も知らない関係もあれば、たった数か月の付き合いなのに深く打ち解ける関係もある。

 私はこの半年で誠くんとみなみちゃんに多くのものをもらった。
 楽しい記憶、嬉しい記憶。そして胸元には今もあのネックレスがさげられている。

 頭の中はあのふたりのことでいっぱいだ。

 やらないなどという選択肢は最初から私には存在しない。たとえ限りなくゼロに近い望みだとしても完全にゼロではないならそれに賭ける価値はある。