どうやらこの世界の運命には強制力があるらしく、事故にあって軽い怪我を負うくらいの出来事ならばともかく、生死にかかわる程の事象を変えるのは困難なのだとか。

 たとえ私が誠くんを監禁したり、全力で邪魔をしても恐らく最終的にあの日あの場所で事故が起きることは避けられないだろうと白猫は語っていた。

「きっと後悔するよ。死ぬとわかっているのに助けられないのだから」
「……誠くんに事故が起きるから行かないでって言っちゃだめ?」
「だめだね。事故に関する予言を行った時点で即失格。その瞬間ボクや時間跳躍中の記憶を消した状態で君をここに戻させてもらうよ」

 他にも、時間をさかのぼる前、つまり現在の記憶を事故回避以外に利用してはいけないらしい。宝くじとか株とか、そういったものへの利用を防ぐためのルールだそうだ。

 そして、当然ながら私が未来から来たことを誰かに喋ることも禁止。

 この世界では時間跳躍といった超常的な事象を何も知らない人間に話すのはルール違反らしく、今の私のように神様の使いから認められた人以外は知らされないのだとか。

 白猫の言い分をまとめると、私は未来から来たことを伏せて彼と接触、事故の回避を図る。その間未来の記憶を私的に利用することは禁止される。

 そして、白猫が言うに成功する確率はほぼゼロに等しい。失敗すれば私は彼を救えなかったと苦しむだけ苦しんだ挙句、この時間軸に戻ることになる。

 確かに、やらない方がいいという忠告も頷ける。