事故だった。会場までの道中、山道を切り開いた一本道で土砂崩れが起きて、彼はそれに飲み込まれたのだ。

 泣きながら家を訪ねてきたみなみちゃんに聞かされた「誠が死んだ」という言葉を理解するまでに、多くの時間を要した。

 現実感なんてなかった。

 だって、つい前日まで彼とメールのやり取りをしていたのだから。朝だって「頑張ってね」と送ったメールに短く「おう」と返してきた。ちゃんと保護フォルダにも入れている。

 葬儀を終えても現実を受け入れられなかった。涙すら、出てこなかった。

 翌日学校に行くと、みなみちゃんは休んでいるようだった。誠くんが死んだことで全校集会があって一時はクラス中がざわついていたけれど、それも数日たてばすぐに収まった。

 なんてことはない普通の日常だ。
 本当に、信じられなかった。

 屋上前に行けばいつも通り行儀悪くスマホを見ている彼がいるに違いない。

 またみなみちゃんと三人でお弁当を食べられる。本気でそう思っていた。だって私の胸には彼から貰ったばかりのネックレスがあるのだから。

 つい最近のことだ、つい最近貰ったばかりだもの、くれた張本人が手の届かないどこかへ行くなんて信じられない。

 けれど、屋上前には誰もいなかった。
 千歳と、そう私を呼ぶ声は聞こえない。

 優しく頭を撫でてくれたあの人はどこにもいない。
 その時になって、私は初めて彼が死んだのだと、理解した。