「私、友達からプレゼントなんて初めてもらった。一生の宝物にするね」

 嬉しさのあまりそう言うと、彼はふと目を丸める。

「え、俺たちって別に友達じゃなくね?」
「えー……」

 せっかくちょっといい雰囲気だったのに台無しだ。
 とはいえ彼の言いたいことは私にはよくわかる。彼にとってテニスが何よりも大事で、私やみなみちゃんはただよく話すだけの他人。

 どうしてそこまでテニスにこだわるのかはわからなかったけれど、大して気にもならなかった。

「まあ、でもあれだ。次の県大会で優勝したら友達になってやらんでもない」

 そう言って彼は私の頭にぽんと手を置いてくれた。その言葉も、触れた手も暖かくて、きっと幸せとはこういうことを言うのだろうと高校生ながら実感した。

「ほんと!? じゃあ絶対勝ってね!」
「ああ、任せろ」

 当日は絶対応援に行こう。
 誠くんなら大丈夫、きっと勝ってくれる。

 勝って、友達になってくれる。
 そしたら私はこの気持ちを伝えよう。
 私は誠くんのことが好きだ、と。

 ――けれど、私が気持ちを伝える日は訪れなかった。

 県大会当日、彼は死んだ。