交換してもらったアドレスと電話番号を何度も見返して、届いたメールはどんな短文でも全て余すことなく保護フォルダに入れたし、読み返すたびに頬が緩んだ。

 口癖のように心の中で繰り返される「でも」「だけど」から始まるマイナス思考も随分と減ったように思う。いじめられている時は早く夏休みになれ、なんて思っていたのに、誠くんに会えない日がもどかしくて早く休みが終わってほしいと思うようにすらなった。

 本当に、本当に、生きるのが心の底から楽しかった。

「ほら、これやるよ」

 夏休み最終日、祭りで花火を見終わった私に誠くんはある物をくれた。
 駅近くのショッピングモール、そのアクセサリーショップの隅っこに置かれている、店内でも最安値の商品。

 それは、ハート型のネックレスだった。

「いいの?」
「ああ、千歳には何かと助けられているからな」

 助けたと言っても課題を手伝ったくらいなのだけど、みなみちゃんの言う通り誠くんは借りを返す主義らしい。

「……嬉しい」

 受け取ると、私はそれをきゅっと優しく握りしめた。
 初めてできた友達から貰った、初めてのプレゼント。

「まあ、安物だけどな」
「ううん、いいの。本当に嬉しい。こういうのは値段じゃなくて気持ちだよ」
「それもそうだな」

ネックレスを付ける私を誠くんは照れくさそうに見ていた。