「テニス用品くらいなら私が買ってあげるよ」
「……仕方ない、たまには行くか」

 若干の間を置いたあと、誠くんは渋々頷いた。

 みなみちゃん曰く「誠は物で釣れる」らしい。テニス用品ならなおさら。なんでも月のお小遣いが五百円しかないのだとか。

 他にも「誠は押しに弱い」とか「借りは返す主義」「泣いている人には弱い」とか、彼を手懐ける手段を多数知っているみたいで、余裕の正体はこれかと素直に感心した。さすがは幼馴染。

 それからは三人で遊ぶことが多くなった。

 といっても、さすがの誠くんも譲れないものがあるらしく誘いに応じる頻度はそれほど多くない。雨で練習ができないからとか、私が貸したノートへのお礼とか、そういった理由がなければまず遊んでくれない。十回誘って一回乗ってくればいい方だ。

 だから私はその一回を大切にすることにした。

「プリクラなんて人生で初めて撮った……!」

 ショッピングモール内で撮ったプリクラを私は大切に、丁寧に財布にしまいこんだ。友達ができたら撮りたいとずっと思っていたのだ。

 誠くんは「こんなのスマホで撮ればいいだろ」なんて言って渋っていたけど、みなみちゃんが言った通り押しに弱いらしく、私がどうしてもと食い下がると折れてくれた。

 そうやって三人で過ごした日々は本当に楽しかった。

 夏休みには無理を言って誠くんからテニスを教えてもらったり、熱中症で倒れた誠くんを看病しに行くも門前払いされたり。

 気が付けば私は、以前よりもずっと笑うことが多くなった。