「いきなりだけどさ、スキンケアってどうしてる？」
「……へ？」

　思考が停止する。
　スキンケアって何？　いや、意味はわかるんだけども。

「あ、えっと、千歳ちゃんだっけ？　名前間違ってたらごめん」
「う、うん。千歳で合ってるよ」

　誠くんがぽつりと漏らした私の名前を一度で覚えたのか、それとも日常的に私に関する話を誠くんから聞いていたのかは定かではない。後者だったら嫌だな、とぼんやり考えつつも私の思考は最初に投げかけられた問いかけの意図を探る方向に偏っていた。

「千歳ちゃんって肌綺麗だよね。普段から気をつけてることとかあるの？」

　混乱する私に気が付いたのか、わかりやすくかみ砕いてから再度そう訊ねてきた。

　なんと返すべきなのだろう。
　確かに肌の綺麗さには若干の自信はある。逆に言えばそれだけしか取り柄がないとも言える。

　休日は遮光カーテンを閉めて部屋に閉じこもっているから紫外線は受けないし、平日も学校以外では外出しないからそれが理由かもしれない。

「別に何も」

　考えに考えた結果私の口から出てきたのはそんな言葉だった。
　直後、しまった、と後悔する。

　これじゃあ「何もしてないのに肌が綺麗なんだよねー」なんてアピールをしている嫌な女みたいだ。日光に当たらない生活をしているとか、紫外線に気を付けているとか、もっと答え方はいくらでもあったはずなのに。