「何見てるの?」
「テニス。フォームの確認」
視線を横に向けることなく淡々と答える。
こうして会話をすること自体がタイムロスなのだ。県大会は三年間で数えられるほどしかない。一分一秒が惜しい。
申し訳ないが、やはり俺は冬木と親しくなれそうにはない。
もしなれるとしたら、それは俺が県大会で優勝した後の話だ。
まあ、その頃までこいつが友好的でいてくれるかどうかはわからないが。
誰だって何度も好意を踏みにじられればいつかは離れていく。
俺がテニスだけに全てをささげると決めた時からそうだ。母を亡くした俺をみんな最初は気遣ってくれていたが、優しさというのは消耗品らしく、使いすぎると無くなってしまうらしい。
気が付けば俺の傍にいたのはみなみだけだった。あいつだけは最初から俺に気を遣わなかったから、そもそも無くなるものが無かったのだろう。
なんにせよ、この冬木という少女が俺に話しかけてこなくなるのは時間の問題だろう。俺はその時がくるまで徹底的に塩対応を心がければいい。
スマホに目を固定する俺の横で、冬木は何かを言いたそうに口を開いては閉じるのを繰り返していた。その様子を見たわけではいないが、時折口から洩れる息が何かを言いたげな雰囲気を出していた。
「テニス。フォームの確認」
視線を横に向けることなく淡々と答える。
こうして会話をすること自体がタイムロスなのだ。県大会は三年間で数えられるほどしかない。一分一秒が惜しい。
申し訳ないが、やはり俺は冬木と親しくなれそうにはない。
もしなれるとしたら、それは俺が県大会で優勝した後の話だ。
まあ、その頃までこいつが友好的でいてくれるかどうかはわからないが。
誰だって何度も好意を踏みにじられればいつかは離れていく。
俺がテニスだけに全てをささげると決めた時からそうだ。母を亡くした俺をみんな最初は気遣ってくれていたが、優しさというのは消耗品らしく、使いすぎると無くなってしまうらしい。
気が付けば俺の傍にいたのはみなみだけだった。あいつだけは最初から俺に気を遣わなかったから、そもそも無くなるものが無かったのだろう。
なんにせよ、この冬木という少女が俺に話しかけてこなくなるのは時間の問題だろう。俺はその時がくるまで徹底的に塩対応を心がければいい。
スマホに目を固定する俺の横で、冬木は何かを言いたそうに口を開いては閉じるのを繰り返していた。その様子を見たわけではいないが、時折口から洩れる息が何かを言いたげな雰囲気を出していた。