周りの女の子たちはみんな私がいじめられていると知っている。だけど、誰も助けてくれなかった。男子に至っては私がクラスにいることすら知らなかったに違いない。

 どこを見渡しても、私の周りに味方なんていない。
 救いなんてないどこにもない。
 絶望感がますます私の胸を締め付けていく。

 ――私が初めて誠くんと話をしたのは、そんなある日のことだった。

 昼休みに入った私は逃げ場を探していた。彼女たちの手から逃れられる場所を。学校という閉ざされた施設のどこに逃げ場があるかはわからない。それでも涙ながら死に物狂いで駆け回り、必死に逃げ場を追い求めた。

 そして、私はあの場所に辿り着いた。

「あ」

 目が合ったからか、彼は気まずそうな声を漏らす。
 息も絶え絶えになってようやく辿り着いたそこには、先客がいた。

 屋上前の階段に座る彼を、私は踊り場から無言で見上げていた。
 見覚えのある顔。当たり前だ、彼はいつも隣の席に座っているのだから。

 財前誠。かろうじて名前だけは覚えていた彼に、私はその瞬間初めて存在を認知されたような気がした。