「……嘘だろ」

 にわかには信じられない。けれど、残酷なまでに確信があった。
 俺はこれから死ぬ。より正確には、既に死んでいたのだ。

 どういうわけか入学式の日まで時間が巻き戻って、そして、冬木だけがその全てを知っていた。

 思い返せばそうだった。

 何故面識のないはずの俺に冬木がたびたび声をかけてくるのか。
 どうして俺の邪魔をしてくるのか。
 どこから俺の電話番号を入手したのか。

 簡単な話だ。

 ――初めから、冬木は全てを知っていたのだ。

 面識がないなんてことはなかった。俺たちは既に会っていたのだ。
 俺の邪魔をしたのも、俺が大会に行けば死ぬと冬木だけは知っていたからだ。

 番号を教えたのも時間が戻る前の俺自身だ。
 これまでの頭痛も既視感も、おそらく過去の記憶が原因だ。

 時間が戻る前の記憶全てがあるわけではないが、少なくとも俺が死んだことだけは何よりもはっきりと覚えている。

 嘘だと思いたい。全部夢だと思いたい。
 しかしこれまでの冬木の言動と照らし合わせると辻褄が合う。