県大会が近づけば近づくほど、あの頭痛の頻度が増えてきているのだ。それに伴って悪夢を見る回数も。

　練習の調子とは裏腹に精神的な面ではあまり気分が良いとは言えなかった。
　そして不安はもうひとつ。

「冬木。おい、冬木！」
「…………え？　あ、ごめん！　どうしたの？」

　屋上前で物思いにふけっていた冬木がはっと我に返ってこちらを見つめてきた。

「ちゃんと聞いてたか？　今週末にはもう大会予選なんだぞ」
「あー、ごめんごめん」

　――ここ数日、冬木の様子がおかしい。

　いつも何かを考えこんでいるようで、ぼそぼそと「大丈夫、何とかなる、大丈夫」と呪文のように繰り返している。

　教室でも屋上前でもずっとその調子だ。まるで何かに焦っているかのよう。問い詰めても誤魔化され、決して口を割ろうとしない。

　とても気が気ではなかった。
　そうして確実に時間は進んでいき、ついに大会予選の日を迎えていた。それでもなお、冬木の様子が変わることはない。