「ところで、ひとつ訊いていいか?」
「なに?」
「前にも聞いたが、どうして俺の邪魔ばかりをするんだ?」

 以前は誤魔化された質問だが、改めて訊いておきたい。

「もちろん、どうしても言えない事情があるのなら無理にとは言わない」
「……そうだね、誠くんは自分のことを全部話してくれたのに私ばっかり秘密を持っているのは公平じゃないよね」

 だけど、と冬木は言葉を続けた。

「だけどごめん。これだけは言えない、言っちゃいけないの」
「そうか」

「でも信じてほしい。私が誠くんの邪魔をするのは決して誠くんを陥れるためじゃないの。今まで散々妨害しておいてこんなことを言っても信じてくれないと思うけど、これだけは命を賭けても誓えるよ」

 嘘偽りのない一本の芯が通った、まっすぐな言葉だと思った。暗闇で目が見えないからこそ、より研ぎ澄まされた聴覚がそう俺に訴えかけてくる。

 いや、たとえ目が見えたとしても、たとえ文章越しだったとしても、俺はこの言葉を信じていただろう。

「わかった、冬木を信じる」

 そもそも最初から疑う余地などどこにもない。もしあるのならば友達になりたいなどと思うわけがない。

 冬木はいつもうるさくて意味不明な奴だが、それでも些細な言動の端々から悪い人間ではないのだと、俺に対する敵意や悪意はないのだということが見て取れるのだ。