もちろんすぐにという意味ではない。母さんとの約束を果たすため、友人を作らずテニスを優先するという誓いは健在だ。

 ただ、友達になりたいという想いだけはどうしても伝えたかった。

 俺は気付いてしまったのだ。いいや、本当は最初から気が付いていた。
 好意というのは、伝えられる時に伝えなくてはいけないものなのだと。

 だって、後悔してからでは遅いのだから。

「これは公園での話の続きだけどさ、聞いてくれるか?」
「……うん」
「さっきも言ったとおり、俺は母さんと約束をした」

 もう二度と会えない母さんとの、たったひとつの約束。
 昔の俺はやんちゃで、親に決められた言いつけや約束を守らない子だった。

 きっと親不孝者だろう、しまいには命に関わるほどの病気にすら気付いてあげられず、あっという間に母さんを失ってしまった。

 早く寝ろとか、ゲームは何時までとか、正直なところ口うるさく言ってくる母さんを煩わしく思っていた時期もあったし口論になった回数は数えきれない。

 今思い返せば反抗期というやつだったのだろう、面と向かって「嫌いだ」なんて言ってしまったこともある。

 でも、母さんが死んで、驚くほど家の中が静かになってから、俺はようやく気がついたのだ。

 俺は母さんのことが心の底から好きだったのだ、と。