そういえば、どこに行ってもこの猫がついてくると言っていたのはいつかの冬木だ。となれば、近くに冬木がいるのかもしれない。その可能性は十分にある。少なくとも闇雲に走り回るよりかはずっと。

 白猫はじっと俺の顔を眺めると、やがて立ち上がり、どこかへと向かっていく。後をつけると時折立ち止まり、俺がついてきているか確認するかのように振り向いてくる。

 まさか冬木がいる場所まで案内してくれているとでもいうのだろうか。いやしかし、猫にそんな知能があるとはとても思えないが。

 とはいえ俺ももう探すあてがない、一か八かだ。

 白猫の後を追いかけていくうちに、段々と祭りの会場から離れていく。それに伴い浴衣を着た人々の密度は薄くなっていった。

 そして、白猫はとある場所まで来るとぴたりと足を止めた。

「ここって……」

 そこは紛れもなく、俺たちが通っている高校だった。会場からひと駅の距離だが、断じて歩けない距離ではない。男の足で十分、女の脚で十五分か二十分もあればたどり着けるだろう。実際俺がここに来るまでに要した時間がそのくらいだった。

 校舎を見ればまだ灯りがついていることが確認できる。新学期に備えるべく教員たちが居座っているのだろう。

 もしかしたら、いるかもしれない。