「でもその割に楽しんでたよね誠くん。金魚すくいとかノリノリでアドバイスしてたし」
「祭りってのは楽しいから祭りって言うんだよ」
「でも来るのは嫌なんだ?」

 これまた頷くと、「意味不明だよー!」と隣から悲痛な声があがった。それはいつも俺がお前に対して思っていることだ。

「テニスの時間が減るの、そんなに嫌?」
「嫌だ、というより困る」
「うーん、そっかあ」

 納得したように言って、冬木は俯いた。けれどそれからすぐに顔を上げると真面目な瞳をこちらに向けてきた。

「前から気になっていたんだけど、誠くんはどうしてそんなにテニスを頑張るの?」
「どうしてって、そりゃあやるからには誰だって勝ちたいだろ。だから頑張る」

「本当にそれだけ?」
「どういうことだ?」

 覗き込んでくる冬木の目はまるで心の奥底を見てきているかのようで、問いかけの意味を考えるよりも先に思わず聞き返してしまった。

「誠くんがあんまり人と話そうとしないのはテニスに集中するためだよね?」
「ああ」
「普通、ただ勝ちたいだけでそこまでしないよ。いつもテニスのことばかりで、熱中症にまでなっちゃって……何かもっと深い理由があるんじゃないかなって」

 ああ、そうか。冬木には言っていなかったっけ。
 隣に座るみなみが無言ながらも「まだ言ってなかったの?」なんて目で俺を見ている。