会場につくとタイミングよく祭り開始のアナウンスが流れた。いつもは車道として使われている大通りは大勢の屋台で賑わっている。

 各屋台に置かれたラジカセから出る和風の音楽は今の十代からすれば音質が悪いことこの上ないが、それもまた味があるように思えて気分がいい。なにより音とともに鼻をかすめる食べ物の匂いが心を刺激してくる。

「腹減ったな」
「私フランクフルト食べたい!」
「お、最初にフランクフルトを選ぶとはわかっているな冬木。やっぱ最初は肉だよな」
「よーし、すぐ食べよう!」

 屋台に詰め寄り、気の良さそうなおっちゃんに注文をするとすぐに目の前で焼き始めてくれた。その真横では氷水の入ったクーラーボックスにコーラやラムネなどの飲料がこれでもかというくらいに冷やされている。

「あ、おっちゃん。ラムネもひとつください」
「私たちも!」

 追加で注文をすると冬木もみなみも便乗してきた。

「あいよ!」

 白い歯を見せて笑う屋台のおっちゃんに百円玉を手渡すと、触るのも痛いくらいに冷えたラムネを差し出してきた。

「ほい、フランクフルトも出来上がりだ!」

 出来上がったそれを口に含むと、思わず「うまっ」と声が出た。出来たてなだけあって物凄く熱い。だが、この熱さがいい。

 祭りの屋台で食べるものというのはどうしてこう、心をくすぐるのだろうか。何を食べても美味しいと思えてしまう。

 やばい、テンションが上がってくるな。
 瞬く間に完食してしまった俺は次は何を食べようかと視線をさ迷わせる。