一応、みなみのそれとは色が違うことくらいはわかる。みなみは黒で、冬木は水色。どちらも花柄だが花に関する知識などないのでとりあえず花柄としか言えない。唯一きちんと認識できる物があるとすればいつも冬木が身に着けているネックレスだけ。
「誠、そういうときは嘘でも褒めるんだよ。浴衣じゃなく、その浴衣を選んだ千歳ちゃん自身を褒めるの」
ぼけっと冬木を眺めているとみなみが小声でそう耳打ちしてきた。
「おお冬木、似合っているじゃないか。素晴らしいセンスだ。凄い凄い。凄いなー」
こんな感じでいいのか、とみなみに目をやると眉間を抑えてため息をついていた。
「ありがとう! 全然嬉しくない!」
どうやら何かがいけなかったらしい。
「まあ最初から誠くんに褒めてもらえるとは思ってなかったけどね。どうせ浴衣なんて全部同じ柄に見えるとか思ってたんでしょ!」
「そ、そんなことは……」
そんなことはある。超ある。大正解。
素直に認めるのも癪だったので黙って会場まで歩き始めることにした。
ふたりとはぐれないよう注意を払いつつ人の流れに沿う。まだ会場ですらないというのに随分と賑やかだ。どこからか太鼓を叩く音も聞こえてくる。
「なんかいよいよお祭りって感じだねー!」
そわそわと周囲を見渡す冬木の目はいつになく輝いているように見える。きっと今日という日を心待ちにしていたのだろう。
そこまで楽しみにしてもらっていたとなれば、俺としても悪い気はしない。人ごみは苦手だが、それも景色の一部と思えば風情があるというもの。
「誠、そういうときは嘘でも褒めるんだよ。浴衣じゃなく、その浴衣を選んだ千歳ちゃん自身を褒めるの」
ぼけっと冬木を眺めているとみなみが小声でそう耳打ちしてきた。
「おお冬木、似合っているじゃないか。素晴らしいセンスだ。凄い凄い。凄いなー」
こんな感じでいいのか、とみなみに目をやると眉間を抑えてため息をついていた。
「ありがとう! 全然嬉しくない!」
どうやら何かがいけなかったらしい。
「まあ最初から誠くんに褒めてもらえるとは思ってなかったけどね。どうせ浴衣なんて全部同じ柄に見えるとか思ってたんでしょ!」
「そ、そんなことは……」
そんなことはある。超ある。大正解。
素直に認めるのも癪だったので黙って会場まで歩き始めることにした。
ふたりとはぐれないよう注意を払いつつ人の流れに沿う。まだ会場ですらないというのに随分と賑やかだ。どこからか太鼓を叩く音も聞こえてくる。
「なんかいよいよお祭りって感じだねー!」
そわそわと周囲を見渡す冬木の目はいつになく輝いているように見える。きっと今日という日を心待ちにしていたのだろう。
そこまで楽しみにしてもらっていたとなれば、俺としても悪い気はしない。人ごみは苦手だが、それも景色の一部と思えば風情があるというもの。