――八月三十一日(月)
改札を出ると夏祭り当日ということもあってまず人の群れが目についた。
待ち合わせ場所である駅前は浴衣姿の男女で賑わっている。ただでさえ気温が高いというのに大勢の人間が密着してくるせいでより暑苦しい。
ミツバチは大群でスズメバチを覆い、その体温で蒸し殺すというが、まさにそれを今人間にやられているところだ。
身を通す隙間すらない人ごみ。どこかに向かおうとすれば嫌でも誰かを押しのけることになる。駅前でさえこの有様なら祭りの会場はより混雑していそうだ。
満足に身動きがとれないながらもあたりに目を向けると、幸いにもすぐ近くにみなみの姿が確認できた。向こうも俺に気が付いているようで、必死に人ごみをかき分けながらこちらに向かっている。
「ごめん誠、着付け屋さん混んじゃってて少し遅れた」
見れば、みなみは黒の生地に薄ピンクの花柄がこしらえてある浴衣を纏っていた。ここまで急いでいたのか、乱れた部分を手で直している。
「いや遅れてないぞ」
ポケットから取り出したスマホの画面をみなみに見せつける。時刻はちょうど七時を迎えた頃だ。待ち合わせの時間までまだ三十分も猶予がある。
「携帯持ってないのはまあいいとして、せめて時計くらいは持ち歩いたらどうだ?」
「それもそうだね。今までは太陽の位置で時間を判別してたから……」
「原始時代の人間かよ」
改札を出ると夏祭り当日ということもあってまず人の群れが目についた。
待ち合わせ場所である駅前は浴衣姿の男女で賑わっている。ただでさえ気温が高いというのに大勢の人間が密着してくるせいでより暑苦しい。
ミツバチは大群でスズメバチを覆い、その体温で蒸し殺すというが、まさにそれを今人間にやられているところだ。
身を通す隙間すらない人ごみ。どこかに向かおうとすれば嫌でも誰かを押しのけることになる。駅前でさえこの有様なら祭りの会場はより混雑していそうだ。
満足に身動きがとれないながらもあたりに目を向けると、幸いにもすぐ近くにみなみの姿が確認できた。向こうも俺に気が付いているようで、必死に人ごみをかき分けながらこちらに向かっている。
「ごめん誠、着付け屋さん混んじゃってて少し遅れた」
見れば、みなみは黒の生地に薄ピンクの花柄がこしらえてある浴衣を纏っていた。ここまで急いでいたのか、乱れた部分を手で直している。
「いや遅れてないぞ」
ポケットから取り出したスマホの画面をみなみに見せつける。時刻はちょうど七時を迎えた頃だ。待ち合わせの時間までまだ三十分も猶予がある。
「携帯持ってないのはまあいいとして、せめて時計くらいは持ち歩いたらどうだ?」
「それもそうだね。今までは太陽の位置で時間を判別してたから……」
「原始時代の人間かよ」