「えっと、ごめん」
「気にしなくていい」
「私、全然知らなかったや……」
「そりゃあ言ってないからな。知ってたら怖いわ。だから本当に気にしなくていいぞ」
「ん、わかった」

 そう言うと冬木はいつもの調子でまたくだらない話を振ってきた。俺に気を遣っているのかは定かではないが、どちらにせよその切り替えの早さにはいささか救われる。

「誠くんはキノコとタケノコどっちが好き?」
「タケノコだな」
「ちっ、敵か」

 何度かそういった他愛もない会話が繰り返される。
 そうこうしている間に冬木が買ってきたゼリーはすっかり空になり、持ってきてくれていた飲み物もぬるくなっていた。

「やば! もうとっくに午後練始まってた! 戻らないと!」

 時刻は既に午後二時近く。どうやら知らぬ間に随分と話し込んでいたようだ。