嫌々ながら玄関のドアを開けると案の定、そこには冬木がいた。

「やあ誠くん! だいぶ顔色が良くなったみたいだね!」
「おかげさまでな。で、何の用だ?」
「お見舞い、という口実で練習をサボりにきました!」

 クズだなこいつ。

「誠くんが居ないテニス部なんているだけ暇だもん。ほらほら、みかんゼリーとかぶどうゼリーとか桃ゼリーたくさん買ってきたよ。一緒に食べようよ」
「ゼリーばっかりだな」
「私ゼリー好きなんだよね。誠くんもきっと気に入るよ。さあ、食べよう!」

 お前、自分がゼリー食べたいだけだろ。

「断る。寝るから帰ってくれ」
「ふっ。千歳ちゃんは賢いので誠くんがそう言うと思って既に交渉材料を用意しておきました」
「なんだと?」

 冬木はジャージのポケットからスマートフォンを取り出すとおもむろに画面をこちらに向けてきた。

「こ、これは……!」
「そう、昨日誠くんが熱中症でダウンする前の練習風景を収めた動画です。これがあれば休んでいる間も自分のどこがいけないか問題点を洗い出せるだろうね! まあ誠くんが帰れって言うなら帰るけどね! あ、スマホの容量少ないから後でこの動画消しとこうかなー」

 冬木は勝ち誇った様子でちらちらとこちらを伺っている。俺が断れないのを知っているのだ。悪魔め。