――八月三日(月)

 ……最悪だ。
 合宿初日、練習に励む部員たちを俺は日陰に座って眺めていた。隣では冬木がパタパタとうちわを扇いでくれている。

「俺は今、猛烈に死にたい」
「気を強く持って……」

 苦笑いしながらスポーツドリンクを手渡してくる冬木。
 俺はちびちびと焼酎を飲む中年男性のように少しずつそれを口に含み、ひと息ついてから現状への愚痴を垂れる。

「なんで俺が熱中症なんかに……」
「どんまいだよ……」

 なんでとは言った手前、理由はわかりきっている。
 ただ張り切りすぎた、それだけだ。

 今まで冬木に邪魔された分を取り戻すべく、ろくに休憩も取らなかったつけが早くも回ってきたのだ。

「今日はもう練習休もう? 誠くんち近いし、送っていくよ」
「いや、せめて練習風景だけでも見させてくれ……」
「だめ! こんな暑いところに居たら治るものも治らないよ。体調が悪いままずるずる練習するよりも、涼しいところで安静にして完全に体調が良くなってから練習するほうがずっと効率的でしょ!」

 完璧な正論だった。

「ほら立って、帰るよ」
「うぐぐぐ」

 俺の手を掴んで立たせようとする冬木に反抗し、できる限り踏ん張った。冬木の言い分が正しいのだと頭ではわかっていても、体がそれを拒絶してしまう。

「もう、玩具売り場で駄々をこねる子供じゃないんだから……」
「ぐううう」

 些細な抵抗も虚しく、結局俺は帰らされることになってしまった。