――七月二十二日(水)千歳の部屋

 私は大馬鹿者だ。

『千歳です。今日はテニス楽しかったよ、ありがとう♡』

 そんなメールを送った直後、スマホを放り投げてベッドに倒れこんだ。

「ごめんね、誠くん」

 枕に顔をうずめ、後悔をひとつ。
 ……ここまでは上手くいったと思う。最終的にはバレちゃったけど、自然に彼の練習を邪魔することができている。

 私は、彼が昼休みになるとあの場所に行くことを知っていた。だから私もそこへ向かった。

 私は、彼が義理人情に弱い人だと知っていた。だからたくさんの恩を売った。

 全ては彼の邪魔をするため。

 もちろん、こんなこと、やりたくてやっているわけじゃない。
 無邪気な笑みを見せて彼を振り回すたびに少しずつ心が壊れていくのが自分でもわかる。

 私は誠くんが好きだ。
 理由まではわからないけれど、彼がテニスのために人を遠ざけていることは知っている。誰よりも熱心に打ち込んでいると私は知っている。

 本当は邪魔なんてしたくない。まっすぐ彼を応援したい。
 でも、それでも、私は彼の邪魔をしなくてはいけない。

「……仕方ないよね」

 何があっても、誠くんを県大会に行かせるわけにはいかない。予選で負けてもらわなくちゃいけない。
 なんとしても、邪魔をしなければいけない。

 だって彼は――。