月曜は殺伐とした雰囲気から始まった。
「ちょっと、あやめ」
出社早々、真由子に手招きされて彼女の席まで行く。
「なに?」
「串さとのこと、知ってるの?」
「なにを?」
興奮気味の彼女がなにを言いたいのかわからない。
「マルサが入ったって」
「マルサって、あの?」
「そ、国税局」
私は顎が外れそうだった。
取引をもくろんでいた店の店長に襲われ、挙げ句の果てに国税局?
脱税していたってこと?
「ほんと?」
「うん。ガイアビールも捜査協力しないといけないだろうね」
この話が本当ならば、取引に至らなくてよかったくらいだ。
なにが二号店よ。
もう再建は難しいだろう。
「おはようございます」
そのとき、ぼそぼそした元気のないあいさつが耳に届いた。
十文字くんだ。
今日はまだ始業十分前。珍しく早い。
「十文字くん」
私は慌てて彼を呼んだが、マイペースにゆったり歩いてくる。