目の前にあるのは幸せな夫婦の笑顔。
羨ましい。私もこんな温かい雰囲気の家庭が……
そう思うたび、胸が縛り付けられるように痛い。
ウェディングプランナーの私が。
人の幸せの一歩を見守る私が。
人の家庭を壊している……

 仕事場で暗い顔はしたくない。
仕事仲間からは厚い信頼がある。
その状況を崩したくない。
だから私は前を向いたように笑顔を見せる。

 仕事終わりに私は後輩に声をかけられる。
「都築さんってまだ結婚してないですよね」
「うん。そうね。今は仕事が大事だから」
 とっさに嘘をつく私に驚く。
こんなにも私は汚れてきてしまっているんだ……
「今はって、都築さんもうすぐ30ですよね。だったら結婚相手探しましょうよ」
 後輩は何も知らない。
だからこそ、親身になって結婚のことを考えてくれている。
それにも申し訳ないと思う。
でも、私に恋なんて。相手なんて。できるはずない。
今の私にそんな資格はない。
「今から合コンなんですよ」
 後輩は周りに聞こえないように小さな声でささやく。
後輩はまだ24歳。きっと話題も世界も違うだろう。
「都築さんも行きましょ。女の子一人足りないんですよ」
 この私がその役を埋められるはずがない。
まず、女の子という年齢でもない。
断ろうと思っているともうすでに後輩は私の腕を掴んで離さない。
「わかった。行くだけね」
 渋々受け入れる私の頭の中は混乱状態だ。
この合コンでも何も変わらない。そう思っていた……