音のする方を見ると目の前に花束があった。
「え?」
花束から顔を出したのは結月だった。
前と変わらない結月の笑顔。まっすぐな瞳。
会いたかった。ずっと。
この日が来るのをどれだけ楽しみにしていたかわからなくなるほどだった。
「久しぶりさとみん」
「相変わらずね」
久しぶりに呼ばれたそのあだ名。
今ではそのあだ名を待っているようだった。
「はい。花束贈呈です」
ふざけているような言い方をして白い歯を見せて笑っている。
「なんで花束なの?」
「一か月後にはさとみん誕生日でしょ。でも一か月後に帰ってこれるかわからないって言ってたから早めの誕生日プレゼント。ちゃんと残るように造花の花束にしておいたよ。持ち帰りやすいし」
結月が渡す花束は今までで一番嬉しい花束だった。それが造花というところも結月らしい気遣いが入っていることがわかってふと笑顔がこぼれる。
「ありがとう」
でも今日は私の誕生日を祝う日じゃない。
私は鞄から小包を取り出して結月に渡す。
「おめでとう」
そう。今日は出会ったころには過ぎていた結月の誕生日。
年齢が違う私たち。私の中で誕生日はいつしか悲しいものになっていた。
でも今は目の前にいる結月のおかげで少し楽しみを持つようになった。
「開けていいの?」
結月はなれない手つきで小包を開ける。
中身を知っている私もそのプレゼントには緊張が走っていた。
「え?」
目を見開く結月が持つのは私が用意したペアリング。
さすがに重いプレゼントだったかな。という不安が募る。
「これ、ペアリングだよね?」
「うん。ごめん重……」
重かったよね?と言いたかった私を結月が包む。
「マジで嬉しい。ありがとう」
結月の声は今までに聞いたことのない興奮の入った嬉しそうな声だった。
安心して思わず笑う私。
結月は体を離すとペアリングを嬉しそうに眺めてくれる。
「さとみん」
「ん?」
ペアリングから目線を私へと変える結月。
その結月の目は前にも見たことのある真剣な目。でも鋭くない優しい表情だった。
その結月が私の左手を握る。
「俺、20歳になったよ」
「そうだね」
私たちに沈黙の時間ができる。
でもそれは重いものじゃない。むしろ幸せな時間だった。
「もういいかな?」
少し不安げな結月。
それが可愛らしくて私は少し笑う。
左手を少し強く握ると、結月は深呼吸をした。
「絶対に幸せにする。いつでも味方になる。さとみんの笑顔を守りたい。だから……」
緊張している結月を見るのは初めてだった。
その結月が愛おしくて仕方なかった。
「だから、俺と付き合ってください」
真剣な瞳に吸い込まれそうな私。
私の答えはもちろん一つ。
「はい。こんな私でよければ」
その瞬間、結月の緊張がほどけたのがわかった。
笑顔で喜んでいる。その笑顔の結月が細い指で私の指にリングをはめる。
私たちは同時に笑った。
「これで何も気にせず、連絡も会うこともできるね」
子犬のように嬉しい顔をする結月を見た私は我慢できなかった。
私は結月の襟をつかんで背を伸ばした。
今まで自分からすることができなかったキスをしたくて。
唇を離すと顔に熱が入る。
黙っている結月を見た瞬間、私は今にも抱き着きたくなった。
顔を真っ赤にして目を丸くしていた。
こんな顔するんだ……
新しい発見をしたように嬉しかった。
嬉しさのあまり笑ってしまう。
「可愛すぎでしょ」
そう聞こえたころには私の肩に結月の手が置かれ、結月は私にキスをする。
目を閉じたとき、私の心の中が色づいたようだった。
もう我慢する必要も自分を抑えることもしなくていいんだ。
自分の心を見せられる人ができたんだ。
結月のおかげでわかることができた。
誰もがきっと自分の心を見せる相手ができることを。
それがどんな出会いであっても関係ないんだ。
私を好きになってくれてありがとう。結月……
「え?」
花束から顔を出したのは結月だった。
前と変わらない結月の笑顔。まっすぐな瞳。
会いたかった。ずっと。
この日が来るのをどれだけ楽しみにしていたかわからなくなるほどだった。
「久しぶりさとみん」
「相変わらずね」
久しぶりに呼ばれたそのあだ名。
今ではそのあだ名を待っているようだった。
「はい。花束贈呈です」
ふざけているような言い方をして白い歯を見せて笑っている。
「なんで花束なの?」
「一か月後にはさとみん誕生日でしょ。でも一か月後に帰ってこれるかわからないって言ってたから早めの誕生日プレゼント。ちゃんと残るように造花の花束にしておいたよ。持ち帰りやすいし」
結月が渡す花束は今までで一番嬉しい花束だった。それが造花というところも結月らしい気遣いが入っていることがわかってふと笑顔がこぼれる。
「ありがとう」
でも今日は私の誕生日を祝う日じゃない。
私は鞄から小包を取り出して結月に渡す。
「おめでとう」
そう。今日は出会ったころには過ぎていた結月の誕生日。
年齢が違う私たち。私の中で誕生日はいつしか悲しいものになっていた。
でも今は目の前にいる結月のおかげで少し楽しみを持つようになった。
「開けていいの?」
結月はなれない手つきで小包を開ける。
中身を知っている私もそのプレゼントには緊張が走っていた。
「え?」
目を見開く結月が持つのは私が用意したペアリング。
さすがに重いプレゼントだったかな。という不安が募る。
「これ、ペアリングだよね?」
「うん。ごめん重……」
重かったよね?と言いたかった私を結月が包む。
「マジで嬉しい。ありがとう」
結月の声は今までに聞いたことのない興奮の入った嬉しそうな声だった。
安心して思わず笑う私。
結月は体を離すとペアリングを嬉しそうに眺めてくれる。
「さとみん」
「ん?」
ペアリングから目線を私へと変える結月。
その結月の目は前にも見たことのある真剣な目。でも鋭くない優しい表情だった。
その結月が私の左手を握る。
「俺、20歳になったよ」
「そうだね」
私たちに沈黙の時間ができる。
でもそれは重いものじゃない。むしろ幸せな時間だった。
「もういいかな?」
少し不安げな結月。
それが可愛らしくて私は少し笑う。
左手を少し強く握ると、結月は深呼吸をした。
「絶対に幸せにする。いつでも味方になる。さとみんの笑顔を守りたい。だから……」
緊張している結月を見るのは初めてだった。
その結月が愛おしくて仕方なかった。
「だから、俺と付き合ってください」
真剣な瞳に吸い込まれそうな私。
私の答えはもちろん一つ。
「はい。こんな私でよければ」
その瞬間、結月の緊張がほどけたのがわかった。
笑顔で喜んでいる。その笑顔の結月が細い指で私の指にリングをはめる。
私たちは同時に笑った。
「これで何も気にせず、連絡も会うこともできるね」
子犬のように嬉しい顔をする結月を見た私は我慢できなかった。
私は結月の襟をつかんで背を伸ばした。
今まで自分からすることができなかったキスをしたくて。
唇を離すと顔に熱が入る。
黙っている結月を見た瞬間、私は今にも抱き着きたくなった。
顔を真っ赤にして目を丸くしていた。
こんな顔するんだ……
新しい発見をしたように嬉しかった。
嬉しさのあまり笑ってしまう。
「可愛すぎでしょ」
そう聞こえたころには私の肩に結月の手が置かれ、結月は私にキスをする。
目を閉じたとき、私の心の中が色づいたようだった。
もう我慢する必要も自分を抑えることもしなくていいんだ。
自分の心を見せられる人ができたんだ。
結月のおかげでわかることができた。
誰もがきっと自分の心を見せる相手ができることを。
それがどんな出会いであっても関係ないんだ。
私を好きになってくれてありがとう。結月……