家に帰ると私は一人ソファに座って膝を抱えた。
結月が忙しいのと同時に私にも今まで以上の忙しさが来ることは考えるうちにわかってきた。
本当にこれから会えなくなるかもしれない。
もしかしたら忙しくて連絡すらできなくなるかもしれない……

 しばらく寂しさと悲しさを感じていた私に現実がその感情に矢をさす。
結月はまだこれからたくさん出会いがある。
私なんかよりももっと魅力のある子たちと会うことになる。
そう思うと私が結月の可能性をつぶしている感覚におちいる。
今、私のことを好きでいてくれることはありがたいし、私は嬉しい。
でも私という存在が近くにいることによって錯覚を起こしているかもしれない。
私のことを忘れればもっと幸せになれるのかもしれない。

 感情が葛藤している。
でも私の好意だけで結月の可能性や将来性をつぶしてしまうのが嫌だった。

 急に携帯が着信を知らせる。その携帯には結月の名前。
でもそれが電話だと知っても出られなかった。
「ごめんね……」
 誰にも届かない謝り。
でも心の中で答えは決まり始めていた。
それは結月の可能性を広げること。
だから私は結月のそばから離れる。

 その決心がつくと私は泣いていた。
不在着信の名前を見ると涙が止まらない。
声を押し殺して泣く私はただただ悲しみで満ちていた。