「でもさっすが文ちゃん! 隅に置けないなぁ♡ あとで数学の課題ノートやっといて」

「隅に置く以前に扱いが雑」

「でも本音言うと、すっごくお似合いだと思うなふたり♡ 桜子透花ちゃんとお友達になりたい!」

「瞳孔開きながら言わないで? ミス狙ってるよね?」

「ただ問題はなんで急に彼女がそんなことを言い出したかだ。あんなイケメンの人気者が傍にいて不服なんてないだろうに」

「下手なんじゃない? アレが」

 二人揃ってジルの頭をぺしんと弾いた。


 ☁︎


「悲惨だったな、数Ⅱ」

 自分では切り替えたつもりでいても、学業には大いに支障を来した。
 売店へと向かう道すがら、普段ならある程度答えられる突然の指名に答えられなかったことを、内田は目に涙まで浮かべて笑ってきた。

「あーおもろかった。2? いや…3? からの「やっぱり全部飛びました」。笑かすな」

「お前伏せながら笑ってただろ。助けろや」

「あーお腹いた」

 
 からから笑う内田の悪友っぷりったらない。他人の不幸は蜜の味というやつなのか、無言で軽く蹴るといて、と喜ばれた。


「起こっちまったことはくよくよしたって始まんねーだろ? 必要なのは傾向と対策ー」

「対策ったって…」

「冷静に考えたら藍沢透花の気の迷いだわな。ジルの言う通り遊ぶ相手欲しさ。…にしてもなんでブンだったかも気になる。友人の贔屓目に見てもわるかねえとは思うよ? けど良くもないじゃんお前」

「黙ってたらさっきから好き勝手言いやがって」

「抜け駆けの心当たりないんかよ、藍沢透花との接点」

「抜け駆け言うな。うーん…?」


 頭を抱えていると「お、(あか)ねぇ」と内田から声が上がる。ぱっと顔を上げれば、自販機の前でコーヒー牛乳を買ったのか、焼きそばパンを小脇に抱えた茜ねぇが振り向いた。