「ラブレタぁあぁああぁぁあぁあ!?」
「し—————————————っ!」
通る声で叫んだ内田の口をとっさに羽交い締めにする。
翌朝の昇降口にて。
靴箱で上履きに履き替え、そのままうなだれていたら「よ、色男」と軽い挨拶が飛んできた。出会いは中学、腐れ縁でもう五年の付き合いにもなると改まった「おはよう」も杜撰になる。
でもだからって二言目の「なんだよラブレターでも貰ったか」でこっちが振り向いて目を見開いただけで冒頭のレスポンスが繰り広げられるのは余りに察しが良くないか。
登校する生徒たちの刮目に苦笑いで返して塞いだ口から手を離すと、内田はぶはっと息を吹き返した。
「マジかお前…っブン、遂にやりやがったな」
「何をだよ」
「で、相手は」
「お前に言ったら全校生徒に知れ渡るから絶対言わない」
「またまたお戯れを。んなこと言ってどーせ大した相手じゃないんだろ?」
小馬鹿にしたような口ぶりに乗せられてるのは承知の上。されどムカついて思わずそっと耳打ちすると、内田は恐怖に慄いたように靴箱に半身をへばり付けた。
「………マジかお前っ!?!」
「声裏返ってんぞ」
「いやもう引くわっ…シンプルに引くわ! 怖っ! どんな手使ってそーなった!?」
「だからお前に言ったら明日には全国ニュースになるから言わないって」
「ふーんあっそ。じゃブンが中学ん時好きだった相手が実は男でそうとは知らず夜のお供にしてたことバラし」
「わ—————————っ!!」
事件は昨日の放課後に起こった。