フロアを照らす妖艶なネオンの煌めき、脳に直接響くサウンド。そして見渡す限りの男と女。そのどれもが俺の登場でまるで夢から醒めたみたいに動きを止めて、ガン、と普段のライトが体育館を照らし出す。

 それを合図した人間は、逸人先輩は舞台上で静かに俺を見据えている。昨日見た冷酷な瞳でだ。


「波多野。俺はお前はもうちょっと頭のいい人間だと思ってたよ」

「逸人先輩。先輩の言う賢い生き方が他の誰かを傷つける方法だって言うんなら、俺はバカで結構です」

「へえ、俺に楯突くわけ。ヘタレでなんの取り柄もないお前が? そいつのこと好きなのか」

 先輩の言葉に、見るからに藍沢さんが反応する。

 簡単に俺から乗り換えたろくでなしなんだけどね、なんて真っ向から笑われて、俯く彼女にもう一度逡巡した。好きか。嫌いか。人間、それだけなのか。

 その感情ひとつで、俺はここまで来たわけじゃない。


「…わかりません」

「は?」

「けど、」

 軽く振り向いて涙目で溺れかけた彼女を見る。俺が目でせめて大丈夫って伝えたら、その瞳が希望にまみれて星が落ちた。

「笑ってほしいって思った。この気持ちは本当だ」


 その言葉に、先輩が糸が切れたみたく噴き出した。そんな時笑う姿すら様になってて、カッコ良くて、でも違った。俺が憧れて夢に見たひとは、逸人先輩はいないんだ。
 一頻り笑ってはー、と遠くを見た彼は俺が涙出た、と目尻を指で取っ払う。

「かーっこいーじゃん波多野。お前いつからそんなヒーロー体質になってたの? けどそれにしては犠牲払いすぎたんじゃない」

「え…?」

「おい」


 先輩の合図で、男二人組が頭に麻袋を被った男女二人を連れて来る。
 それがどっ、と目の前に倒れてから自分の目を疑った。

——————内田と、ジルだ。


「…俺がわざわざ突拍子もなく今日のこんな場設けると思った? お前らを誘き寄せるためにわざと種撒いたに決まってんだろ」

「…」

「で、それにまんまと引っ掛かった。魚釣りみたいだな、あっさり釣れたよ。こそこそ嗅ぎ回ってるやつがいるってわかった時点で濱高の奴ら放しといた」

 思わずばっ、と二人を連れてきた男二人を見上げる。奇抜な髪をした強面の眉なし男は俺を見て低く笑った。

「綺麗な顔した茶髪のにいちゃんとツインテールの女の子だろ? 男の方に関してはしこたま殴ったから息してるか確認してくれよ。もっとも、原型留めてっか知らんけど」