「!? わ、笑っ…」

「はは、ごめん。なんかだって、めちゃくちゃ絵がシュールすぎて」

 だめだツボった、と声を殺して笑う俺に、隣に座った藍沢さんがこっちを伺っている様子が何となく伝わってくる。それでも構わずにいたら、中腰になっていた彼女がすとん、と椅子に腰掛けたのが見えた。


「…て、がみ」

「うん?」

「手紙、読んでいただけましたか」


 その言葉で現実に戻される。

 笑顔のままひくっ、と鳴った喉と、相変わらず俯いて表情を見せてくれないお姫様に仕方なく正面を向くと、目を伏せる。


「…うん、さっき」

「…そうですか」

「あのさ、」

「好きです」


 言った。

 はっとして思わず振り向いてしまう俺の隣で、彼女は意を決したように膝の上できゅっと両手を握り締める。


「波多野先輩のことが、」

「ちょちょ、ちょっと、」


 待って。

 一旦落ち着こう、と額に手を置き目を逸らしてもう片方の手で待ったをかければ、「えーっ…と、」と苦笑いが滲み出る。


「俺、その…藍沢さんのことよく知らない、っていうか」

「藍沢透花15歳。身長160㎝血液型はAB型。スリーサイズは」

「言わんでいい!」


 ぴしゃりと言いのければシンと辺りが静まり返った。

 …しまった、いつもの癖でつい。さてはこの子相当いいキャラしてんな。てか何で俺の周りってキャラ濃いやつらばっかなんだ。うーん、と言葉を選びあぐねている俺に、彼女はぽそりと声を絞り出す。


「…波多野先輩が私のことを知らなくても、私は波多野先輩のことを知ってます」

「いや…うぅん…」

「…胡散臭い、ですか」

「って言うより正直…藍沢さんみたいな可愛くて、学校の男子が彼女に選びたい子No.1に挙げるほどモテる子が、どうして俺なんかを気に留めたのかが全っ然わからなくて」

「………私にそんな評判があるんですか」

「え? あ、うん。だって事実めちゃくちゃ可愛いじゃん」