あまりにオーバーなリアクションと神社や寺でよく見る煙を頭に被るようなモーションに、逸人先輩も最早ちょっと引いている。おいやりすぎだろと俺が口を出す前に、幸いにも先輩の友人が「おい、そろそろ」と先輩を呼びかけた。


「あはは、波多野お前面白い友だち持ってんな。よかったら今度二人で遊び来いよ、女子も呼んどくからさ」

「え! ほんとすか! 向坂先輩! 神、仏! ありがとうございます!」

「ありがとうございます」


 軽く頭を下げる俺に野球部のような完璧なお辞儀をする内田。そして向坂先輩一行が店を出たとわかったら隠れていたジルと茜ねぇが戻ってきて、舌打ち混じりに半目の内田が顔を上げた。


「…あーの野郎最後マウント取ってきやがったな」

「考えすぎだろ…てかお前どういうつもりだ! いきなり参加してくんだもんめちゃくちゃ肝冷えたわ!」

「それはこっちの台詞だこんな局面でもヘタレ貫き通しやがって、おれがいなきゃ今頃藍沢透花の話どころかカラオケ行きだったんだぞ」

「それは…」

「挙げ句の果てにおれら二人して“彼女募集中の残念男子高校生”に格下げだ。顔売るんだったらもうちょい賢く接触する予定だったのに」

「募集なんてしなくてもカッコよくて可愛い美女がここに二人もいるのにねー♡」

「「それは大丈夫なんだけど」」


 は? と両サイド女子二人に凄まれて俺も内田も目を閉じる。

 たった十数分の出来事だろうに、なんだろうな、気を張っていたせいで疲弊した。はー、と長いため息をつく俺の肩を、ぽんと茜ねぇに叩かれる。…すごい同情の目だなオイ。


「ま、でも近くで見てよくわかったな、向坂逸人のオーラたるやあれ、本物だ。凡人とは違うスター性バッチバチだったもん、話してみてわかったけど噂で聞く見目がいいってだけじゃない。たぶん本質の話だな、要は人柄ー。あの人あたりの良さじゃ後ろに後輩やら同級生がついてくんのも頷けるよ。
 おれらがイケメン担当文太様様があの向坂逸人を前にして霞んでたかんな、あれ? 今もラフ画ですか?」

「黙れ内田。そろそろ殴る」