せっかく取り戻したバッグもない。服も取られた。
どいつもこいつも、まるで良いことをしたかのように笑顔で店を出て行く。きっと今取ったわたしの持ち物を、どこかのゴミ山に捨てるんだろう。
追いかけたかったが、丸裸ではそれもできない。怒りで泣きじゃくっていると、店の女性が近づいてきて、背中に布をかけてくれた。
「ダイジョブデース」
女性は真っ黒い顔で、歯が白くて、目が澄んでいる。ふいに、女性の顔に彼の顔が重なった。
「まだ、取り戻したいですか」
女性は言った。
わたしはその顔を見上げる。なにもかも捨てられて、一瞬前まで混乱していたのに、今はどうだろう。
女性はそっと手を伸ばすと、わたしの胸からゴミを摘まみ取るような仕草をした。摘まみ取った何かを、女性はポイっと窓の外に投げた。
一体何だったのかは分からない。
ただ、目に映る景色が急に鮮やかで美しく、清浄なものになった。
窓から入る風は、川の臭いがしたけれど、それすら愛おしいものに思えた。
どいつもこいつも、まるで良いことをしたかのように笑顔で店を出て行く。きっと今取ったわたしの持ち物を、どこかのゴミ山に捨てるんだろう。
追いかけたかったが、丸裸ではそれもできない。怒りで泣きじゃくっていると、店の女性が近づいてきて、背中に布をかけてくれた。
「ダイジョブデース」
女性は真っ黒い顔で、歯が白くて、目が澄んでいる。ふいに、女性の顔に彼の顔が重なった。
「まだ、取り戻したいですか」
女性は言った。
わたしはその顔を見上げる。なにもかも捨てられて、一瞬前まで混乱していたのに、今はどうだろう。
女性はそっと手を伸ばすと、わたしの胸からゴミを摘まみ取るような仕草をした。摘まみ取った何かを、女性はポイっと窓の外に投げた。
一体何だったのかは分からない。
ただ、目に映る景色が急に鮮やかで美しく、清浄なものになった。
窓から入る風は、川の臭いがしたけれど、それすら愛おしいものに思えた。