『お前さ、ずっと俺たちを大切にしてて、自分で俺たちを守るとしてるだろう。他人をバレないように、無理矢理しても一人の時間を作り出す。』
「だって、私はあなた達と忘れたくないから…」
『あぁ、その気持ちは一緒で、俺たちも、出来限りにお前を見守ってきた。』
「…栞は私のこと触れないのに?」
『ヘミアと栞じゃないよ。俺とあの子だけの話だよ。』
「…え?」
『まぁ、長くなるけど、どこかで座って話そう。』
私は適当に床に座って、蒼の話を促すように彼を見つめてる。
『…お前ってさ、床に座るとまた腰痛くなるぞ。』
「大丈夫だよ。最近も痛くならないし。」
『…昔からも聞きたかったけど。』
「え?なに?」
『お前、あの子といた頃もこんな口調で話してたの?』
「【蒼】?いや、しない。ちゃんとするよ。」
蒼は再びタメ息した
『だよなぁ、あの日泣いてるから、あんな丁寧な言葉で喋ったか一瞬迷ったけど、やっぱいつもあんな感じだった…いや、まあ、俺と関係ないけど…』
「だって、蒼の方が話しやすいもん。ついストレートに話したくなる。」
『これ褒め言葉なの?…まあ、これは置いといて、さっきの件に話そう…』
蒼は話を整理するように、一旦口を噤んだ。
…え?今からするのは、そんな大事な話なの?
『先に言うけど、俺はあの子のこと嫌いからわざとこう言うじゃないぞ。』
「うん。」
『彼が、お前に言わないでほしいと言ったけど、でも、俺は言おうとしたい。』
「あれ、会ったの?」
蒼は、確かに、【蒼】と会ったことないはず。
『会ってないよ。ただ彼がノートを残してくれただけ。』
初めて聞いた。
「え?何か残ってるの?」
『俺宛のものだから、お前には見せないよ。まぁ、今から少し話そうけどね…まず、先言った通り、俺たちは、俺たちの方法でお前のこと見守ってる。』
「でも、私、別に危険だと思わないし…」
『それでね、その方法の一つは、この家のことだ。』
「……」
なんでいきなりアニメやマンガの展開みたい。
こんな話がありえないけど。
「…私がここに閉じ込めるなんてしないよね?」
蒼は思わず吹き出して笑った。
『何を言ってんの?俺たちは超能力者ではないってさ…しかも、お前、いつも自分でここに来たり出たりするじゃん?』
「それはそうだけど…」
『ここってさ、俺がいつもいるのに、栞はここに来られないでしょう?』
「うん。」
『俺も彼女の世界に行けないよ。じゃ、これでわかる?』
「何か?」
『ここ、この家は俺と【蒼】の世界だ。』
「うん。」
『でも、この家にある部屋は、俺たちの部屋じゃなく、誰かの部屋だった。』
「…それ、どういう意味?」
誰の部屋だった?
あれは誰の部屋でしょう。
「だって、ここ、蒼の世界でしょう?ここに来られるのは私と蒼だけから、ここで他の人にも見たことない…あっ、へミアの部屋だった?いや、へミアの部屋はこんな感じではない。栞?いや、そんなはずはない。だって栞の部屋もこんな感じではな…」
『お前、なんで栞たちの話になると早口になったかよ。』
…自分は全く気付いてないけど、落ち着くために深呼吸をした。
ついでに頭の中に整理してから話そう。
『聞け。【誰かの部屋】というのは、それぞれの世界での部屋じゃない。ややこしくなるから、へミアと栞の世界はパラコズムと言うよね…』
蒼は紙に円を描いて、パラコズムという単語を書いた。
そのあとまた何か書き続いてる。
…なんか、めんどくさいことになりそう。
朝一に複雑なこと考えてないなぁ…
てか今何時だろう…?
いや…頭全然回らない…
そういえば、蒼の部屋には時計置いてないのによく知ってるなぁ。
『よっし、これを見て話を続きましょう。』
蒼からその紙をもらった。
蒼は私に先書いてた紙を見せた。その紙にみんなの名前と円二つ書いた。
もちろん、一つの円は【パラコズム】と書いて、もう一つのは【家】と書いた。
【家】って、ここのことだろう。
紙をじっと見て、違和感を感じたけど、
はっきり何か引っかかるかわからない。
『で、ここと彼女の世界は違うから、一緒にしないでよ。』
「うん。」
『今度は、俺たちのことだけど、実は俺たちも彼女達と違い。』
「違うの?」
『お前、昔言ったでしょう。栞と直接話したいのになぜできない?栞が泣いても涙すら拭いてあげられなく、おかしくない?って言ったよね』
「あぁ、言った。今はもうどうしても変わらないとわかるから諦めたけど…」
『ただ俺はお前と会話できるし、お前を触るのもできる。』
「そうだよね。」
今考えば、確かに違うんだ。
「その代わりに、私も蒼の視点から世界見えない。」
『そうだよ。俺たちは栞たちと同じではないとも言える。よって、お前が出会った子は大体二つタイプがある。一つは、ヘミアや栞みたいに彼女の物語を見る。一つは、俺みたいに直接交流できる。』
蒼は言いながら名前のリストに線を引いて、詳細を書いた
【へミア・栞】
㊀彼女の視点でいる ㊁お前が自己意思で行動できない ㊂お前と話せない
【俺・蒼】
㊀お前の視点でいる ㊁お前が自己意思で行動できる ㊂お前と話せる
綺麗に分けた。
ふっと、その違和感の正体がわかった。
「…ねぇ、なんで私の名前がないの?」
『はぁ?なんでお前の名前も書くの?』
「え?だって、私もここにいるでしょう。」
と言って、紙に書いた【家】に指を差した。
『だとしても、お前の名前は別に分けるだろう。』
「これいじめだよね?」
『俺たちは【パラコズム】に行けないし、栞たちも【家】に行けない。しかし、お前は【パラコズム】も【家】も自由に行ったり出たりできる。だから、お前の名前書くなら、こうでしょう。』
蒼はその二つの円の下にもう一つの円を描いて、その中に【お前】と書いた。
「余計に寂しくなる…」
『今更?なんでいつも変な所にこだわってるの?』
「変な所じゃないよ!私にとって大事なことだよ!」
堂々と言い返すしたら、蒼は深いタメ息をついた。
「…蒼、今日タメ息多くない?」
『いや、俺よくこんなに長生きしたなぁ、えらいと思っただけ…なっ!危ないよ!』
私、思い切って床に置いてるクッションを投げた。
「そんなこと言うな。」
『冗談だってさー』
「…頼むから長生きしてよ…君だけは長生きして欲しい。」
『あぁ。お前死ぬまで死なないわ。』
余裕の笑みを浮かべていた蒼を見ると、なぜか泣きそうになった。
…ダメだよ。
もし二度と蒼が失われたら、自分はどうなるか想像するだけでゾッとした。
絶対二度と忘れないと決まった。
『…さっき何を言ったっけ…話が終わらないから、ちゃんと話聞いてよ。』
「私のせいなの?」
『えっ、と、お前にとって、世界は何なの?』
「世界はなんなの…」
『だって、辞書の定義からすると【自分が認識している人間社会の全体】や【自分が自由にできる範囲】か様々な定義がある。』
「うん。」
『栞たちにとって、世界は彼女たちが住んでることでしょう。しかし、俺たちの世界は見たとおりにただの住宅だけどね。まぁ、別に文句言わないけど…』
いつの間に、蒼の声はいつもの優しい声になった。
「でも、蒼は私が外にいた時も声かけてくれるじゃないの?」
『あぁ、でも、俺はそっちで自由に動けないよ。お前を触るのもできなく、ただ声かけるしかできない。遊ぶ時には良いけど、お前が体調崩した時も、何もできなく、そんな自分が嫌だった。』
頭に整理しながら蒼の話を聴いてると、なぜか新鮮だった。
蒼はね、見た目で年下だと見えるけど、わりとやればちゃんとできる人だ。
いつもわからないことを教えてくれたりアトバイスをくれたりしてる。
私はそれで何回も救われた。
「…私にとって、世界は私が生きる場所だけど、あなた達と出会う場所も世界だよ。ただ、あなた達の世界は、私が生きる世界よりも大切だと思ってる。」
『あぁ、だからここには色々な部屋で構成してる。ここの一つ一つも、あなたと関連あったよ。』
「…それって、?」
『俺の部屋もあるし、さっきの扉も、元々誰かの部屋だったけど、今はもうなくなったから、中に入れないよ。』
「…蒼は入ったことある?」
『うん?』
「あの部屋元々あったと分かれば、蒼はわかっるよね?」
『…まず、あの部屋より、もっとわかりやすいところがあるよ。じゃ、あのリビングはどこかで見たか思い出せないの?』
「リビング?」
『今は家具とかないけど、でも記憶は残ってるはず。』
ビクッ。
突然、落下するようにビクッとした。
その直後、不快感をあらわにした。
…私、聞いていけないこと聞いたの?
…それとも、何か覚えたはずなのに思え出せないの?
ビクッ。
心臓の鼓動が急に速くなった。
『ーーーー』
一瞬、自分の名前を聞かれてトキッとした。
思わず蒼と目合わせて、彼は明らかに苦い顔をしてる。
「…ごめん、ぼーっとした。」
しかし、そのおかげで心臓の動きも落ち着いた。
『お前さ…』
「ごめんってば。」
『また体調崩したかと思ったんだ。』
「あっそれなら大丈夫だ。今月崩したことないから平気だよ!でも、心配してくれてありがとうね。」
『心臓…持たな…』
蒼は小声で 何か言ったけど、ちゃんと聞き取れない。
「今何か言った?」
『…お前、体調を崩すのが頻繁になったじゃない?』
「今落ち着いたから、毎月一回ぐらい?それより、この話はどうでもいい。あのリビングの方がよほど大事だ。」
『あれはもう言うことないぞ。残りは、お前が自分で思い出さないと意味ないんだ。』
蒼は絶対譲らないようにきっぱりした。
「思い出せと言われても…忘れたものをこんな簡単に思い出せるの?」
『急いでないし、今日じゃなくてもいいでしょう?』
私の返事待たず、蒼は立ち上げて私の頭にポンポンと軽くなでた。
そして、なぜか床に散らばった本を片付ける。
視線を床に落としたまま、先の話を整理してみる。
明らかに判明したのは、私は何か忘れてる。
誰かのこと?
覚えてるはずのに思い出せない。
記憶を呼び戻したいのに思い出せない。
自分は、どっちに言うと記憶力良いタイプだと思ってた。
今まで何回も記憶を鮮明に記憶を蘇らせた。あの時は、頭から映画みたいに綺麗な映像を流されて、その直後、当時の感触と感情も全部感じれる。
ただ、鮮明に思い出せる記憶は私自身が経験したものに限る。
しかし、蒼の話によると、私は関係者だそうから思い出せるはず。
なんで全然思い出せないだろう。年取ったから、記憶力落ちたせいかなぁ。
『…でも、懐かしいよね。』
「え?」
『お前、最近、毎日30分か1時間ぐらいしかここいられなかった。ここに来ても眠そう顔をして、話しながら寝落ちしたりしてた。まあ、仕事だった疲れて仕方ないと思うけど、休みの日も、出かけること多い…』
「ごめん…」
『あっ責めてないよ。お前はちゃんと俺に報告するからいいけど…』
あの頃と何も成長してないんだ…
私の視線は床に落としたまま考える。
社会人になると時間全然足りなくなった。
昔の知り合いともそこまで連絡取れないし、昔の趣味も全部できなくなった。
休日もだるくてのんびりするか、それともどこかでぶらぶらする。
蒼との時間は昔よりだいぶ減らした。
幸いのは、蒼との時間が減らしても、彼は変わらず私のそばにいる。
「だって、私はあなた達と忘れたくないから…」
『あぁ、その気持ちは一緒で、俺たちも、出来限りにお前を見守ってきた。』
「…栞は私のこと触れないのに?」
『ヘミアと栞じゃないよ。俺とあの子だけの話だよ。』
「…え?」
『まぁ、長くなるけど、どこかで座って話そう。』
私は適当に床に座って、蒼の話を促すように彼を見つめてる。
『…お前ってさ、床に座るとまた腰痛くなるぞ。』
「大丈夫だよ。最近も痛くならないし。」
『…昔からも聞きたかったけど。』
「え?なに?」
『お前、あの子といた頃もこんな口調で話してたの?』
「【蒼】?いや、しない。ちゃんとするよ。」
蒼は再びタメ息した
『だよなぁ、あの日泣いてるから、あんな丁寧な言葉で喋ったか一瞬迷ったけど、やっぱいつもあんな感じだった…いや、まあ、俺と関係ないけど…』
「だって、蒼の方が話しやすいもん。ついストレートに話したくなる。」
『これ褒め言葉なの?…まあ、これは置いといて、さっきの件に話そう…』
蒼は話を整理するように、一旦口を噤んだ。
…え?今からするのは、そんな大事な話なの?
『先に言うけど、俺はあの子のこと嫌いからわざとこう言うじゃないぞ。』
「うん。」
『彼が、お前に言わないでほしいと言ったけど、でも、俺は言おうとしたい。』
「あれ、会ったの?」
蒼は、確かに、【蒼】と会ったことないはず。
『会ってないよ。ただ彼がノートを残してくれただけ。』
初めて聞いた。
「え?何か残ってるの?」
『俺宛のものだから、お前には見せないよ。まぁ、今から少し話そうけどね…まず、先言った通り、俺たちは、俺たちの方法でお前のこと見守ってる。』
「でも、私、別に危険だと思わないし…」
『それでね、その方法の一つは、この家のことだ。』
「……」
なんでいきなりアニメやマンガの展開みたい。
こんな話がありえないけど。
「…私がここに閉じ込めるなんてしないよね?」
蒼は思わず吹き出して笑った。
『何を言ってんの?俺たちは超能力者ではないってさ…しかも、お前、いつも自分でここに来たり出たりするじゃん?』
「それはそうだけど…」
『ここってさ、俺がいつもいるのに、栞はここに来られないでしょう?』
「うん。」
『俺も彼女の世界に行けないよ。じゃ、これでわかる?』
「何か?」
『ここ、この家は俺と【蒼】の世界だ。』
「うん。」
『でも、この家にある部屋は、俺たちの部屋じゃなく、誰かの部屋だった。』
「…それ、どういう意味?」
誰の部屋だった?
あれは誰の部屋でしょう。
「だって、ここ、蒼の世界でしょう?ここに来られるのは私と蒼だけから、ここで他の人にも見たことない…あっ、へミアの部屋だった?いや、へミアの部屋はこんな感じではない。栞?いや、そんなはずはない。だって栞の部屋もこんな感じではな…」
『お前、なんで栞たちの話になると早口になったかよ。』
…自分は全く気付いてないけど、落ち着くために深呼吸をした。
ついでに頭の中に整理してから話そう。
『聞け。【誰かの部屋】というのは、それぞれの世界での部屋じゃない。ややこしくなるから、へミアと栞の世界はパラコズムと言うよね…』
蒼は紙に円を描いて、パラコズムという単語を書いた。
そのあとまた何か書き続いてる。
…なんか、めんどくさいことになりそう。
朝一に複雑なこと考えてないなぁ…
てか今何時だろう…?
いや…頭全然回らない…
そういえば、蒼の部屋には時計置いてないのによく知ってるなぁ。
『よっし、これを見て話を続きましょう。』
蒼からその紙をもらった。
蒼は私に先書いてた紙を見せた。その紙にみんなの名前と円二つ書いた。
もちろん、一つの円は【パラコズム】と書いて、もう一つのは【家】と書いた。
【家】って、ここのことだろう。
紙をじっと見て、違和感を感じたけど、
はっきり何か引っかかるかわからない。
『で、ここと彼女の世界は違うから、一緒にしないでよ。』
「うん。」
『今度は、俺たちのことだけど、実は俺たちも彼女達と違い。』
「違うの?」
『お前、昔言ったでしょう。栞と直接話したいのになぜできない?栞が泣いても涙すら拭いてあげられなく、おかしくない?って言ったよね』
「あぁ、言った。今はもうどうしても変わらないとわかるから諦めたけど…」
『ただ俺はお前と会話できるし、お前を触るのもできる。』
「そうだよね。」
今考えば、確かに違うんだ。
「その代わりに、私も蒼の視点から世界見えない。」
『そうだよ。俺たちは栞たちと同じではないとも言える。よって、お前が出会った子は大体二つタイプがある。一つは、ヘミアや栞みたいに彼女の物語を見る。一つは、俺みたいに直接交流できる。』
蒼は言いながら名前のリストに線を引いて、詳細を書いた
【へミア・栞】
㊀彼女の視点でいる ㊁お前が自己意思で行動できない ㊂お前と話せない
【俺・蒼】
㊀お前の視点でいる ㊁お前が自己意思で行動できる ㊂お前と話せる
綺麗に分けた。
ふっと、その違和感の正体がわかった。
「…ねぇ、なんで私の名前がないの?」
『はぁ?なんでお前の名前も書くの?』
「え?だって、私もここにいるでしょう。」
と言って、紙に書いた【家】に指を差した。
『だとしても、お前の名前は別に分けるだろう。』
「これいじめだよね?」
『俺たちは【パラコズム】に行けないし、栞たちも【家】に行けない。しかし、お前は【パラコズム】も【家】も自由に行ったり出たりできる。だから、お前の名前書くなら、こうでしょう。』
蒼はその二つの円の下にもう一つの円を描いて、その中に【お前】と書いた。
「余計に寂しくなる…」
『今更?なんでいつも変な所にこだわってるの?』
「変な所じゃないよ!私にとって大事なことだよ!」
堂々と言い返すしたら、蒼は深いタメ息をついた。
「…蒼、今日タメ息多くない?」
『いや、俺よくこんなに長生きしたなぁ、えらいと思っただけ…なっ!危ないよ!』
私、思い切って床に置いてるクッションを投げた。
「そんなこと言うな。」
『冗談だってさー』
「…頼むから長生きしてよ…君だけは長生きして欲しい。」
『あぁ。お前死ぬまで死なないわ。』
余裕の笑みを浮かべていた蒼を見ると、なぜか泣きそうになった。
…ダメだよ。
もし二度と蒼が失われたら、自分はどうなるか想像するだけでゾッとした。
絶対二度と忘れないと決まった。
『…さっき何を言ったっけ…話が終わらないから、ちゃんと話聞いてよ。』
「私のせいなの?」
『えっ、と、お前にとって、世界は何なの?』
「世界はなんなの…」
『だって、辞書の定義からすると【自分が認識している人間社会の全体】や【自分が自由にできる範囲】か様々な定義がある。』
「うん。」
『栞たちにとって、世界は彼女たちが住んでることでしょう。しかし、俺たちの世界は見たとおりにただの住宅だけどね。まぁ、別に文句言わないけど…』
いつの間に、蒼の声はいつもの優しい声になった。
「でも、蒼は私が外にいた時も声かけてくれるじゃないの?」
『あぁ、でも、俺はそっちで自由に動けないよ。お前を触るのもできなく、ただ声かけるしかできない。遊ぶ時には良いけど、お前が体調崩した時も、何もできなく、そんな自分が嫌だった。』
頭に整理しながら蒼の話を聴いてると、なぜか新鮮だった。
蒼はね、見た目で年下だと見えるけど、わりとやればちゃんとできる人だ。
いつもわからないことを教えてくれたりアトバイスをくれたりしてる。
私はそれで何回も救われた。
「…私にとって、世界は私が生きる場所だけど、あなた達と出会う場所も世界だよ。ただ、あなた達の世界は、私が生きる世界よりも大切だと思ってる。」
『あぁ、だからここには色々な部屋で構成してる。ここの一つ一つも、あなたと関連あったよ。』
「…それって、?」
『俺の部屋もあるし、さっきの扉も、元々誰かの部屋だったけど、今はもうなくなったから、中に入れないよ。』
「…蒼は入ったことある?」
『うん?』
「あの部屋元々あったと分かれば、蒼はわかっるよね?」
『…まず、あの部屋より、もっとわかりやすいところがあるよ。じゃ、あのリビングはどこかで見たか思い出せないの?』
「リビング?」
『今は家具とかないけど、でも記憶は残ってるはず。』
ビクッ。
突然、落下するようにビクッとした。
その直後、不快感をあらわにした。
…私、聞いていけないこと聞いたの?
…それとも、何か覚えたはずなのに思え出せないの?
ビクッ。
心臓の鼓動が急に速くなった。
『ーーーー』
一瞬、自分の名前を聞かれてトキッとした。
思わず蒼と目合わせて、彼は明らかに苦い顔をしてる。
「…ごめん、ぼーっとした。」
しかし、そのおかげで心臓の動きも落ち着いた。
『お前さ…』
「ごめんってば。」
『また体調崩したかと思ったんだ。』
「あっそれなら大丈夫だ。今月崩したことないから平気だよ!でも、心配してくれてありがとうね。」
『心臓…持たな…』
蒼は小声で 何か言ったけど、ちゃんと聞き取れない。
「今何か言った?」
『…お前、体調を崩すのが頻繁になったじゃない?』
「今落ち着いたから、毎月一回ぐらい?それより、この話はどうでもいい。あのリビングの方がよほど大事だ。」
『あれはもう言うことないぞ。残りは、お前が自分で思い出さないと意味ないんだ。』
蒼は絶対譲らないようにきっぱりした。
「思い出せと言われても…忘れたものをこんな簡単に思い出せるの?」
『急いでないし、今日じゃなくてもいいでしょう?』
私の返事待たず、蒼は立ち上げて私の頭にポンポンと軽くなでた。
そして、なぜか床に散らばった本を片付ける。
視線を床に落としたまま、先の話を整理してみる。
明らかに判明したのは、私は何か忘れてる。
誰かのこと?
覚えてるはずのに思い出せない。
記憶を呼び戻したいのに思い出せない。
自分は、どっちに言うと記憶力良いタイプだと思ってた。
今まで何回も記憶を鮮明に記憶を蘇らせた。あの時は、頭から映画みたいに綺麗な映像を流されて、その直後、当時の感触と感情も全部感じれる。
ただ、鮮明に思い出せる記憶は私自身が経験したものに限る。
しかし、蒼の話によると、私は関係者だそうから思い出せるはず。
なんで全然思い出せないだろう。年取ったから、記憶力落ちたせいかなぁ。
『…でも、懐かしいよね。』
「え?」
『お前、最近、毎日30分か1時間ぐらいしかここいられなかった。ここに来ても眠そう顔をして、話しながら寝落ちしたりしてた。まあ、仕事だった疲れて仕方ないと思うけど、休みの日も、出かけること多い…』
「ごめん…」
『あっ責めてないよ。お前はちゃんと俺に報告するからいいけど…』
あの頃と何も成長してないんだ…
私の視線は床に落としたまま考える。
社会人になると時間全然足りなくなった。
昔の知り合いともそこまで連絡取れないし、昔の趣味も全部できなくなった。
休日もだるくてのんびりするか、それともどこかでぶらぶらする。
蒼との時間は昔よりだいぶ減らした。
幸いのは、蒼との時間が減らしても、彼は変わらず私のそばにいる。