「はい、今日の分だ」
「エディさん、お疲れ様です。すぐ精算しますのでお待ちください」
 顔馴染みの受付嬢にいつも通りに薬草の入った篭を渡す。
 受付嬢はなれた手付きで薬草を仕分けていく。
「今回も上質の薬草でした。今回の報酬です」
 受付嬢から報酬の銀貨10枚を貰う。
「エディさんの採ってきた薬草は薬屋から評判が良いんですよ」
「自慢じゃないが10年も薬草を摘んでいるんだ。目利きぐらい出来るようになるさ」
 そう言って笑うが頭の中では(もう10年経つのか······)と思ってしまった。

 俺、エディ・ロンバルはカタリア王国のギルドに所属しているどこにでもいる冒険者だ。
 15歳の時に故郷から幼なじみ達と共に一旗挙げる為にギルドに所属した。
 以来、ずっとFランクのままだ。
 勿論、昇級する機会が無かった訳ではないが、何故か失敗して落ちてしまう。
 幼なじみ達がどんどんランクを上げていき自分だけFランク止まりに最初の頃は焦りもあったし嫉妬だったり喜びもあったりと複雑な感情があった。
 しかし、幼なじみ達が勇者パーティーのメンバーに選ばれ5年前に魔王を見事倒した事で俺の心はボキッと折れてどうでもよくなった。
 一旗挙げるなんて言う若い頃のやる気は何処へやら、今では1日1日の生活をやりくりするのに頑張っている。
 幼なじみ達は故郷では英雄視されてるしそれなりの地位を築いている。
 最後に言葉を交わしたのは最初の昇級試験の結果発表の時、つまりほぼ10年は話していない。
 向こうだってもう俺の事なんて忘れてしまっているだろう。
「もうそろそろ潮時かもしれないな······」
 ギルドを出て町を歩きながら俺は一人呟いた。
 かと言って故郷に帰っても肩身が狭いだろう。
「そういえば今日は宝くじの発売日だったな」
 この国では定期的に宝くじを販売している。
 町の店で買い物をすると抽選券が貰えくじを引く事が出来る。
 その景品は下はティッシュペーパー、上は一生遊んで暮らせる大金をゲット出来る、人生一発逆転が出来るチャンスだ。
 俺も何回かチャレンジしているのだが肉の塊が当たったぐらいだ。
 それでもパッとしない日常の中一夜の夢を見ても良いんじゃないか、と思う。
 という訳でギルドから貰った抽選券があったので1枚引く事にした。
 箱の中に手を入れてガサゴソとやり1枚のくじを出した。
「では確認させてもらいますね······、えぇっ!?」
 くじを見た係員が驚きの声をあげた。
「お、おめでとうございますっ! 特賞の大当たりですっ!!」
「······はい?」
「しかも今回の特賞は『領地』ですよっ!」
 えっ、領地?
 金じゃなくて?
 突然の事で俺の頭は理解が追い付かなかった。