遂に儀式当日の朝。
結局あまり眠ることはできず、早めに家を出た。爺ちゃんは朝早くから狩りにでかけているのか、弓矢と罠一式がなかった。

今日は学校ではなく、直接神殿に向かった。神殿に着くと集合時間より早いのにもうすでに何人かの生徒がいた。中には馬車の周りで朝食を取っている人もいた。まぁ、そんなことをするのは生徒中でキースだけなので、その馬車の周りには合わせて取り巻きが多くいた。取り巻きの名前はクラスメイトなのだが、正直覚えていない。

しばらくするとライドがやってきた。ライドも早く来るかと思っていたが、いつもの通り時間ギリギリに来たので、こういういつも通りの人間を見ると安心する。

「よう!ワンダ!ギリギリ間に合ったぜ!」
「お前はいつも通りだな。。。まぁライドらしいよ」
「褒めるなよ~」
「褒めてねえ!」

そんないつものやり取りをしていると神殿から数人の魔法士が出てきた。神殿勤めの魔法士は白いローブを着けているのですぐに見分けがつく。

「えー。集まった未来ある若者たちよ。今から君たちに可能性の種を与えよう。我先に思う者は門の前に集まれ」

仰々しい言葉を言うと数名の魔法士が誘導員として下に降りてきた。

「いよいよだな、ワンダ。楽しみで仕方ないぜ」
「そう思うならもう少し早く来ような。結局俺たちが最後なんだからさ」

この儀式は何故か今も昔も早いもの勝ちという方法を取っている。魔法士曰くチャンスは自ら勝ち取るものなので、ここばかりは家柄などは関係なく並んだ順なのだ。ただ、そうは言ってもみんな結局権力に負けるため、今年はキースが一番手になった。こういう意味のないルールはいつか消え去ってほしいと切に願う。

順々にみんな指輪を手入れて、神殿から出てきた。肩を撫でおろす人もいれば、歓喜の声をあげている人もいる。この儀式で手に入れる指輪によって人生の道筋がほぼ決定してしまうのだから無理もない。
キースはというと指輪を手に入れて、すぐに馬車で帰って行った。まぁ、あいつが能力の低い指輪を手に入れることはないとは思うのでさして気にはしていないが、すぐに帰った所を見ると、家族への報告が優先だったのだろうか?

遂に僕とライドの順番になった。僕は最後だろうと、最後から2番目だろうとさほど順番に興味がなかったので、ライドに先を譲った。

「本当にいいのか?俺がすごい奴手に入れちゃうかもしれないぜ?」
「それならそれで、今後はライドの指輪の能力で手助けしてもらうさ。いいから先に行って来いよ」
「ありがとよ!じゃあ、少し行ってくるわ」