「エベレスト投資」は、正式には「エベレスト投資顧問株式会社」という名前である。

頂上を目指すという意味の社名も西脇社長はひっかかったに違いなかった。

ちょうどアーバン投資の真下の七階の部屋が事務所だった。

結局、しつこくせがむのでエルモを連れて雑居ビルに来たが、エレベーターから降りたユースケは仰天した。

あふれんばかりの二十代くらいの若者がひしめいていたからである。

スーツ姿の者もいれば、ラフな格好の者もいる。共通してオタクっぽい雰囲気が漂っていた。

「面接ですかあ?」誰かが大声でユースケに声をかけてきた。

声の方を見ると「ボンバー社面接会場」というプラカードを持った社員らしき男が、もみくちゃになりながらかろうじて立っていた。

「いえ……あの……。エベレスト投資顧問に来て……」

「ええ?何ですか! 聞こえないんですけど! こちらが最後尾……うわ!」

その男は、面接者の波に押された勢いで前のめりに倒れ込んだ。

不意に、ユースケの腕が急にぐいと引っ張られ、別の扉の中に引きずり込まれた。

「いやいや、えらいタイミング悪い時に来られましたなあ」

ユースケの腕をひっぱったのはエベレスト投資顧問の社長の篠原であった。

やや小太りでテディベアを思わせる体型と顔立ちで、ギョロ目が印象的であった。

「同じ階に、ボンバー社があるんですわ。ほら、ボンバー社って、例の大流行しているバクハツする爆弾の携帯ゲームを作った会社ですわ。『ボンボン』ってな。テレビの宣伝でもやっているからあんさんもようご存じやろ?忙しくて手が足りなくなったというんで、今日面接ですわ。そしたら、ぎょうさん人が来てなあ」関西弁で篠原社長が大声で説明した。

篠原の顔は妙に黒い。

それが、ゴルフ焼けなのか酒焼けなのか分からないが、その黒さが大きな目を目立たせており妙に人を圧倒する雰囲気があった。