「じゃあ、何か思い出したら、ご連絡を…」
ユースケは仕方なくゆっくりと立ちあがろうとした。と、同時に、美紀の表情が変わり、おもむろに立ち上った。
「キャー!」
美紀が突拍子もない声を上げたので、ユースケは思わずひっくり返りそうになってしまった。
美紀は受付の方を指していた。
見ると、白い犬がドアの前でしっぽを振って座っていた。なぜか駅長の帽子をかぶっている。エルモだった。
「エルモ! おまえ何で…」
「何何何何! かわいい~! 白くてフワフワ!」
「キャ~アレアレアレアレ~!」
今度は、横田美智ががばと立ち上がり、ユースケの声がかき消されるほどの奇声をあげた。
「もしかして、ポチ駅長なの?そうなの? キャーどうしよう!」
美智は大興奮で足をバタバタさせて「ポチ駅長?ポチ駅長?」と繰り返していた。
数年前に赤字路線を復活させるために、苦肉の策としてある駅で猫を駅長にしたところ大ブームとなった。それにあやかって今度は別の駅で犬を駅長に就任させたところ、今度はこちらの方が猫駅長をしのぐほど人気になったのである。
それが「ポチ駅長」であり、たまたまエルモと同じ犬種であった。
ポチ駅長は、鉄道マニア女子、いわゆる「鉄子」の間では超アイドル犬である。
その後は、先ほどの無表情な二人とはうって変り、急に饒舌になった。ユースケが聞かなくても最近の社長や周囲の様子についてペラペラと話をした。
「で、あの双子によると西脇社長は下の階の社長と仲が悪かったんだな」
ユースケの部屋で紅茶を飲みながらエルモが言った。二人だけの時にだけ人間になる。
「お前、俺の紅茶だぞ!」ユースケが憮然として言った。
「やっぱり、さすがフォートナムメイソンだね。ユースケママの選択は素晴らしい」エルモは何も気にせずに紅茶をすする。
「で、下の階は同業者で開業準備をしていたらしいじゃないか。気になるね。聞き込みした方がいいね」エルモが紅茶をうまそうに飲んだ。その意見にはユースケも賛成だった。
「それにしても、ユースケって本当に聞き込みがヘタだな!」
「え……」
「それでもコンサルタントなの?」
痛いところをつかれた。
「もちろん、そ、そうだけど……」
実はユースケは、幼い時から人とのコミュニケーションは苦手な方だった。コンサルタントとして独立した時、最もそのことが気にかかっていたのだ。
ユースケは仕方なくゆっくりと立ちあがろうとした。と、同時に、美紀の表情が変わり、おもむろに立ち上った。
「キャー!」
美紀が突拍子もない声を上げたので、ユースケは思わずひっくり返りそうになってしまった。
美紀は受付の方を指していた。
見ると、白い犬がドアの前でしっぽを振って座っていた。なぜか駅長の帽子をかぶっている。エルモだった。
「エルモ! おまえ何で…」
「何何何何! かわいい~! 白くてフワフワ!」
「キャ~アレアレアレアレ~!」
今度は、横田美智ががばと立ち上がり、ユースケの声がかき消されるほどの奇声をあげた。
「もしかして、ポチ駅長なの?そうなの? キャーどうしよう!」
美智は大興奮で足をバタバタさせて「ポチ駅長?ポチ駅長?」と繰り返していた。
数年前に赤字路線を復活させるために、苦肉の策としてある駅で猫を駅長にしたところ大ブームとなった。それにあやかって今度は別の駅で犬を駅長に就任させたところ、今度はこちらの方が猫駅長をしのぐほど人気になったのである。
それが「ポチ駅長」であり、たまたまエルモと同じ犬種であった。
ポチ駅長は、鉄道マニア女子、いわゆる「鉄子」の間では超アイドル犬である。
その後は、先ほどの無表情な二人とはうって変り、急に饒舌になった。ユースケが聞かなくても最近の社長や周囲の様子についてペラペラと話をした。
「で、あの双子によると西脇社長は下の階の社長と仲が悪かったんだな」
ユースケの部屋で紅茶を飲みながらエルモが言った。二人だけの時にだけ人間になる。
「お前、俺の紅茶だぞ!」ユースケが憮然として言った。
「やっぱり、さすがフォートナムメイソンだね。ユースケママの選択は素晴らしい」エルモは何も気にせずに紅茶をすする。
「で、下の階は同業者で開業準備をしていたらしいじゃないか。気になるね。聞き込みした方がいいね」エルモが紅茶をうまそうに飲んだ。その意見にはユースケも賛成だった。
「それにしても、ユースケって本当に聞き込みがヘタだな!」
「え……」
「それでもコンサルタントなの?」
痛いところをつかれた。
「もちろん、そ、そうだけど……」
実はユースケは、幼い時から人とのコミュニケーションは苦手な方だった。コンサルタントとして独立した時、最もそのことが気にかかっていたのだ。