次の日、ユースケは早速行動を開始した。
まず、アーバン投資の営業事務を担当する横田美紀と経理事務を担当する横田美智に話を聞くこととした。
この二人は、極めて名前が似ているが、それもそのはずで、二人は姉妹であり、しかも双子である。
「聞き込み調査を早速開始することにしたの。僕も連れて行ってよ」
今朝、エルモにどこへ行くのか聞かれたので、思わず話をしてしまったユースケであったが、すぐに後悔した。
「なんでお前を連れて行かなくちゃいけないんだよ。邪魔だろ。犬連れなんて」ユースケは支度をしながら、不機嫌そうに言った。
「忘れたの、僕は警察犬だったんだよ。役に立つに決まっているでしょ。それに今日の聞き込み先は、美人双子姉妹なんでしょ。全くもって得意分野」エルモは相変わらずきどって髪をかき上げた。
――美人双子姉妹って……。そんなわけないだろ……。
実際に横田姉妹を前にしてため息をついた。
横田姉妹は二人とも、少し古臭い感のある紺色の事務員の制服を着ていた。
横田美紀の方がやや髪が短いものの、二人とも同じようなセミロングの髪型で、たまに後ろに髪を結んでいる時などは見分けがつかず、よく間違えられた。
二人とも表情に乏しく、喜怒哀楽があまり表に出ない。
普段は何を考えているのかよく分からないのであるが、ある特定のテーマに関しては、それぞれ過剰に思われるほど反応を示した。
そのテーマとは、横田美紀は「ネコ(あるいはフワフワした動物)」であり、横田美智は「鉄道(乗り鉄専門)」である。
二人とも「オタク」であった。
来客用応接室に何も言わずに無表情で座っている二人を前にして、話を盛り上げることが苦手なユースケは戸惑いながらもなんとか口を開いた。
「あのですね……。えーっと…。そうですね……」
姉妹は相変わらず無表情のまま座っている。
「えっと……美紀さんは……西脇社長が亡くなった前の日はどうされていましたか」
「私は美智ですけど」横田美智が表情を変えずに答えた。
――しまった!名前を間違えるという失態を犯してしまった!
ユースケはぎこちなく笑いごまかそうとした。ハンカチで額の汗をぬぐった。
「あ、失礼しました。美智さん……。どうですか。前の日とか、そうでなくても良いのですが、社長に変わった事はありませんでしたか」ユースケはしどろもどろに質問した。
「いえ、あの日の前日は、特に変わった事はありませんでした」美智が無表情で言った。
「美紀さんはどうでしょうか」
「私も美智も忘年会に出席するので、六時に事務所を一緒に出ました」やはり同じように無表情で隣に座っていた美紀が答えた。
「あの……前の日でなくても良いのですが、何か社長に変わった事や、気付いた事などがあったら教えてほしいのですが」
「いえ、特には」美紀が首を振ると、隣の美智も首を振った。二人のしぐさはほとんど同じである。
その後もユースケが冷や汗をかきながら、何とか二人に話をしてもらおうと質問をするものの、それ以上の事については何も話をしてくれず、沈黙が続いた。
――困ったな……何かジョークを一つでも言えればいいんだけど、思い浮かばないよ。
何度も頭をひねってみるが、結局何もでてくることはなかった。
どれくらいぎこちない会話と沈黙が続いただろうか。
結局ユースケは特に新しい情報も出てこないので出直すことにした。
まず、アーバン投資の営業事務を担当する横田美紀と経理事務を担当する横田美智に話を聞くこととした。
この二人は、極めて名前が似ているが、それもそのはずで、二人は姉妹であり、しかも双子である。
「聞き込み調査を早速開始することにしたの。僕も連れて行ってよ」
今朝、エルモにどこへ行くのか聞かれたので、思わず話をしてしまったユースケであったが、すぐに後悔した。
「なんでお前を連れて行かなくちゃいけないんだよ。邪魔だろ。犬連れなんて」ユースケは支度をしながら、不機嫌そうに言った。
「忘れたの、僕は警察犬だったんだよ。役に立つに決まっているでしょ。それに今日の聞き込み先は、美人双子姉妹なんでしょ。全くもって得意分野」エルモは相変わらずきどって髪をかき上げた。
――美人双子姉妹って……。そんなわけないだろ……。
実際に横田姉妹を前にしてため息をついた。
横田姉妹は二人とも、少し古臭い感のある紺色の事務員の制服を着ていた。
横田美紀の方がやや髪が短いものの、二人とも同じようなセミロングの髪型で、たまに後ろに髪を結んでいる時などは見分けがつかず、よく間違えられた。
二人とも表情に乏しく、喜怒哀楽があまり表に出ない。
普段は何を考えているのかよく分からないのであるが、ある特定のテーマに関しては、それぞれ過剰に思われるほど反応を示した。
そのテーマとは、横田美紀は「ネコ(あるいはフワフワした動物)」であり、横田美智は「鉄道(乗り鉄専門)」である。
二人とも「オタク」であった。
来客用応接室に何も言わずに無表情で座っている二人を前にして、話を盛り上げることが苦手なユースケは戸惑いながらもなんとか口を開いた。
「あのですね……。えーっと…。そうですね……」
姉妹は相変わらず無表情のまま座っている。
「えっと……美紀さんは……西脇社長が亡くなった前の日はどうされていましたか」
「私は美智ですけど」横田美智が表情を変えずに答えた。
――しまった!名前を間違えるという失態を犯してしまった!
ユースケはぎこちなく笑いごまかそうとした。ハンカチで額の汗をぬぐった。
「あ、失礼しました。美智さん……。どうですか。前の日とか、そうでなくても良いのですが、社長に変わった事はありませんでしたか」ユースケはしどろもどろに質問した。
「いえ、あの日の前日は、特に変わった事はありませんでした」美智が無表情で言った。
「美紀さんはどうでしょうか」
「私も美智も忘年会に出席するので、六時に事務所を一緒に出ました」やはり同じように無表情で隣に座っていた美紀が答えた。
「あの……前の日でなくても良いのですが、何か社長に変わった事や、気付いた事などがあったら教えてほしいのですが」
「いえ、特には」美紀が首を振ると、隣の美智も首を振った。二人のしぐさはほとんど同じである。
その後もユースケが冷や汗をかきながら、何とか二人に話をしてもらおうと質問をするものの、それ以上の事については何も話をしてくれず、沈黙が続いた。
――困ったな……何かジョークを一つでも言えればいいんだけど、思い浮かばないよ。
何度も頭をひねってみるが、結局何もでてくることはなかった。
どれくらいぎこちない会話と沈黙が続いただろうか。
結局ユースケは特に新しい情報も出てこないので出直すことにした。