「俺が仕掛けた針を回収しようと思って来てみたら、最後にこんな邪魔が入るとはな。ま、あんたらが死んでも、明日の朝にはもう俺は国外に逃亡する手はずになっているから、捕まらないけどね。ユースケさんは、若いからじわじわ毒が効いて苦しんで死ぬことになるけど、邪魔をしようとした報いかな?あと一刺しすれば、コロッといくから、ここまで突き止めた褒美の気持ちも込めてそうしてもいいんだけど。篠原さんも、一緒に行きますか?ハハハ……」

そう言うや否や、ポケットから毒針を取り出し、ユースケめがけて手をあげた。

その瞬間、何かが飛び出し都丸に体当たりした。都丸は不意に現れた敵の攻撃によろめいた。

「だ、誰だ……」

床には一匹の白い犬が歯をむき出して唸っていた。エルモであった。

エルモは敵をサイボーグの様に素早く見定め、一瞬のうちに、都丸に向かって飛びかかると針を持った手にかみついた。都丸は不意打ちに叫び声をあげた。

「お、おのれ……」

都丸は落ちていた針をなんとか拾うと、今度はエルモに振り下ろそうとした。

その時、何かが都丸の頭にあたり、都丸がのけぞった。床には都丸のシューズが転がった。投げたのはユースケだった。

都丸は不意に起こった襲撃に怒りをあらわにしユースケに向かって毒針を投げつけようとした。

エルモはすかさず都丸の顔に飛びかかり、鋭い犬歯で顔を容赦なく噛みついた。

都丸は悲鳴を上げ、倒れこんだ。

「遅くなってすまん!」

遅れて登場したのは哲也であった。

所轄の刑事を何人も引き連れ、都丸はあっけなく御用となった。ユースケもほどなく到着した救急隊により病院に搬送されることになった。